著 者:海堂尊
出版社:宝島社
出版日:2012年2月14日 第1刷 3月15日 第2刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
「海堂ワールド」のファンだからこそ楽しめる。そう思った本。
登場人物の多い海堂ワールドの作品の中で、おそらく目立たない方のキャラクターを主人公とした短編集。
主人公は、桜ノ宮市警の玉村警部補。「チーム・バチスタの栄光」から始まる「田口・白鳥シリーズ」に登場している。本書でも形式的には、「田口・白鳥シリーズ」の主人公である東城大学医学部の田口公平医師を、玉村警部補が訪問して過去の事件を語る体裁になっている。
語られるのは、玉村警部補の上司であった加納警視正が関わった事件で、まぁ加納警視正は「目立つ方のキャラクター」だった。「タマちゃん」が主人公のはずがやっぱり目立たない。
語られる事件は4つ。1つ目の「東京都二十三区内外殺人事件」は、東京都と神奈川県の境界線で起きた、殺人・死体遺棄事件。田口と厚労省の白鳥室長も絡んでいる。2つ目の「青空迷宮」事件は、テレビ番組のセットの迷路の中で起きた殺人事件。6つのカメラが撮影する中で起きた変型「密室殺人」。
3つ目は、スキー場の山頂の積雪に埋もれ、春の雪解けになって遺体が発見された事件。被害者の衣服についた血痕のDNA型から容疑者が特定された。警視庁が導入したDNAデータベースの成果だという。4つ目は、なかなか全貌が見えない。まず登場するのは、持ち込まれた遺体に歯科治療を施すという、いかにも怪しい仕事をする男。後に、田口と友人の放射線科医の島津が登場する。
面白かった。加納警視正の捜査も、白鳥室長のふるまいも、ちょっとムチャな感じがするけれど、「目的のためには手段を選ばず」で、結果オーライを許そう。タマちゃんの人となりや私生活が少し垣間見られて、ファンがつきそうだ。
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