著 者:樫野孝人
出版社:CAPエンタテインメント
出版日:2021年5月28日 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
図らずも自分の来し方と行く末を思うことになった本。
著者の樫野さんはリクルートに入社し、人材開発部→キャンパスマガジンの編集長→福岡ドームに出向→メディアファクトリーで映画製作→ヘッドハンティングでITベンチャーの社長→神戸市長選に出馬(2度落選)→地域政党を結成・兵庫県議会議員を1期、現在は大学のMBAの客員教授を務めておられる。上昇志向と大胆さを感じさせるキャリアだけれど、本書によるとこれで「半歩ずつ」の転向なのだそうだ。
本書は、そんな著者が歩んできたキャリアの道程で得た「仕事を楽しくする」ひいては「人生を自由に面白くする」方程式を、37個の項目に分けて紹介する。「方程式」は「コツ」とか「考え方」と言い換えてもいいかもしれない。例えば第2章「心の状態を整える」には、「天職(やりたい仕事)よりも秀職(人より上手にできる仕事)を探す」とか「変化するのは怖いけど、試してみるのはみんな大好き」といった膝を打つ言葉がたくさん並ぶ。
著者は、それぞれの方程式を実例付きで紹介する。読めば著者の半生が分かるぐらいに具体的だ。本の主旨からして「成功した実例」が多いのだけれど、ちょいちょい「挫折」経験が挟まれていて、それがリアリティを引き上げている。実は私は著者と同い年。同じ年に社会人となり、同じ時代を生きてきたわけで、詮ないこととは知りながら、自分が来た道と引き比べてしまう。
まぁ30代でITベンチャーの社長にヘッドハンティングされる半生と比べると、どうしても引け目を感じてしまう。その負け惜しみも一因としてあって
、全体的に「頑張りすぎ」な感じがする。そんなに頑張らなくても、それなりに楽しくやっていける。
ただし、本書の対象読者は20代30代(著者の大学生の娘さんを含む)の人。人生の先輩から後輩に贈る言葉としては、このくらいのポジティブさが必要だろう。それに著者の本意は「頑張って上を目指せ」ではなくて「仕事を自分で面白くする」ことのススメで、若者に伝えたい大事なことだと思う。また一カ所「方程式…いや肝だと思う」とちょっと踏み込んだ締め方をした項目がある。それは「自分をきちんと公平公正に評価してくれる環境を選ぶ」ということ。このことは私も自分の娘に言いたい。
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