著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2021年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
藍子さんの「怖くはなかったわ」というセリフにシビれた本。
「東京バンドワゴン」シリーズの第16弾。いつもは東京は下町の古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」が舞台で、そこを営む堀田家の面々の活躍を描いているけれど、今回は舞台をイギリスに移した番外長編。ロンドン警視庁の事務官ジュン・ヤマノウエが活躍する。
高校を卒業してプロミュージシャンになった研人くんたちのバンド「TOKYO BANDWAGONN」が、レコーディングのためにイギリスにやってくる。レコードスタジオの近くには、研人くんの伯母にあたる藍子さんが、夫のマードックさんとそのご両親と一緒に暮らしている。
物語は、ジュンが上司の警部補と一緒にマードック家を訪ねたあたりから動き始める。マードックさんが、絵画の密輸事件の事情聴取で任意同行に応じて
出かけたまま行方不明になってしまう。警察に連絡したら話を聞き終わって帰ったというのに、翌日になっても帰ってこない。連絡もない。電話もつながらない。
面白かった。このシリーズは、ミステリーと人情噺を組み合わせた本編もなかなかいいのだけれど、番外長編が新鮮な躍動感があっていい。第4弾「マイ・ブルー・ヘブン」は、いつもは語り担当の、堀田家の大ばあちゃんのサチさんの若いころを描いている。ちなみにサチさんはすでに亡くなっているのだけれど、この世に留まって皆を見守っている、という設定。
何がよかったかと言うと、サチさんが物語に絡んでくるとことだ。セリフもたくさんある。それには新登場のジュンの存在の意義が大きい。彼女はサチのような人が「見える(し話せる)人」なのだ。これまでにも一度登場した人物の再登場を繰り返して、新たな物語を生み出してきたシリーズなので、ジュンの今後の登場とサチさんの活躍が楽しみだ。
そういえば「マイ・ブルー・ヘブン」も、サチさんが活躍する物語だった。私はサチさんの活躍が楽しみなのかもしれない。ファンなのかもしれない。
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