著 者:瀬尾まいこ
出版社:集英社
出版日:2021年2月28日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
老人ホームのお年寄りたちが素敵だ、と思った本。
主人公は宮路、29歳、男性、夢はミュージシャン、無職。高校一年生でギターを始めて4人でバンドを作った。そのバンドも徐々に減って大学を卒業する時には宮路一人になってしまった。音楽で食べていくという思い切りも情熱もない。タイミングや運がめぐってくれば..という甘い考えで、大学を卒後して7年。ちなみに実家が資産家で、毎月20万円が宮路の口座に振り込まれる。そんなヤツだ。
その宮路が老人ホーム「そよかぜ荘」に呼ばれて弾き語りに行った。宮路の演奏は利用者に受けず、持ち時間40分が持たなかったけれど、宮路はそこで「神」に出会った。余った時間を埋めるために介護士の一人がサックスで「故郷」を演奏した。最初の一音を聴いて体中が反応した。彼は天才いや神だと、宮路は思った。
「神」の名前は渡部君。物語はその渡部くんの演奏を聴くために、翌週から「そよかぜ荘」に通う宮路を描く。毎週金曜日にレクリエーションがあって、渡部君が演奏することもあるらしい。通ううちに利用者たちと仲良く?なって、頼まれた買い物をしてきたり、ウクレレを教えたり。根はいいヤツなのだろう。
著者の瀬尾まいこさんの作品は、主人公に優しい。働かないで親の金で暮らしている宮路にも優しくて、誰かに頼りにされることで、気持ちも晴れる。でも厳しくもある。宮路が一生「そよかぜ荘」に通っているわけにはいかない。いつか起きないと…
宮路が渡部君に最初にリクエストした曲は、Green Dayの「Wake Me Up When September Ends」。歌詞は本書には書かれていないし、宮路自身はそう思ってなさそうだけれど、宮路の今とシンクロするところもある。
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