著 者:高田郁
出版社:角川春樹事務所
出版日:2014年2月18日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「みをつくし料理帖」シリーズの第9作。「味わい焼き蒲鉾」「立春大吉もち」「宝尽くし」「昔ながら」の4編を収録した連作短編。
主人公の澪は、江戸の元飯田町にある「つる家」という料理屋の板前。彼女には、かつて修業した「天満一兆庵」の再興と、今は吉原にいる幼馴染の野江と昔のように共に暮らす、といった2つの望みがある。
今回は、おだやかな展開だった。前回で再会を果たした「天満一兆庵」の若旦那との絆も結び直せたし、澪の母代わりであった芳にも良縁があった。「立春大吉餅」「宝尽くし」など、料理の名前もおめでたいものが続く。
野江と共に暮らすという望みは、「野江の身請け」をするという、目標は定まった。しかし、いくら腕がいいとは言っても料理屋の板前の澪にとっては、それは相変わらず雲をつかむような話だった。それでもできることから手を付けるのが、澪の強さだ。
それに、少しづつだけれど前に進んでいる。一時期は大切な人が澪の元を離れて行ってしまったけれど、支えてくれる人がまた現れる。これまでの艱難辛苦を乗り越えることで蒔いた種が、ひとつひとつ花が咲いて実り始めた感じだ。易者の占いによると、澪の運命は「雲外蒼天(うんがいそうてん)」。行く手を遮る雲はかなり薄くなってきたようだ。
それもそのはず、次作「天の梯」でシリーズ完結。楽しみなような寂しいような。
※巻末の特別収録「富士日和」には、あの人が登場している。しみじみといい作品だ。
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