著 者:池上彰
出版社:SBクリエイティブ
出版日:2015年12月15日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
昨年の通常国会で可決、成立したいわゆる安保関連法について、私は「得ることがほとんどなく、懸念されることが大きい」という理由で、基本的に反対の意見を持っている。しかしもう一度整理をしてみようと思って本書を読んでみた。
「戦争する国になるのか?」という、煽りの強いタイトルへの答えは、本書の中には出ていない。それはまだ「これからどうするのか」にかかっているからだろう。帯には「この国の未来を自分で判断するために」と書いてある。
本書は「賛成派と反対派、噛み合わなかった議論」という序章から始まり、「憲法違反ってどういうこと?」「安保関連法っていったいなに?」という基本的な事項の整理に続く。そのあと「中国」「アメリカ」「反対運動」「戦後の安全保障政策」のそれぞれとの関係を解説する。コンパクトで過不足がない。
判断は読者に預けるという主旨からか、著者の池上さんは、中立の立ち位置を取る。例えば「(安保関連法は)憲法違反ではないという立場の人」と「憲法違反だという反対派の人たち」の意見それぞれの問題点を指摘している。
ただし「中立」と言っても、放送法の議論に出てくるような「両方の意見を同じ分量」などという本意からズレたものではない。安保関連法への賛成派、あるいは政府与党の問題点が圧倒的に多い。池上さんは「反対」とは言わないけれど「賛成していない」のは明らかだ。
そんなわけで、もう一度整理をしてみても私の意見は変わらなかった。読まなくても同じだった、ということでは全くない。本書を読んで初めて知ったことは多い。憲法審査会のこと、関連法の11の法律のそれぞれのこと、日米安保条約のこと。勉強になった。
最後に。池上さんも書いているけれど、昨年の安保関連法案の審議は、「憲法論議」と「安全保障論議」が、混乱した形で並行して進められた。このために「憲法」も「安全保障」も「あるべき姿」の議論ができていない。不幸だ。
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