著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2013年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「東京バンドワゴン」シリーズの第8弾。
東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」を営む堀田家の下町大家族物語。毎回ミステリー仕立ての心温まる話が楽しめる。今回は、いつもと少し趣向を変えて、堀田家だけでなく脇役の皆さんも含めた、11人が代わる代わるに語りを務める短編集。
順番に言うと、堀田家の長男の紺さん、次男の青さんの奥さんのすずみさん、フリーライターの木島さん、紺さん奥さんの亜美さん、IT企業の社長の藤島さん、ちょうど真ん中の6人目が紺さんたちのお母さんの秋実さん。
後半は、まずは青さん、紺さんの息子の研人くん、近所の小料理居酒屋の真奈美さん、真奈美さんのお店の板前の甲さん、最後が堀田家のおおばあちゃん(紺さんたちのおばあちゃん)のサチさん。
堀田家には今4世代が同居している大家族。それぞれに語るべき物語がいくつもある。今回、これまでに少しだけ触れられたり、まったく語られなかったことが、まとまった形で読者に示された。読者サービスの巻と言えるだろう。
どの話もしみじみと面白かった。でもひときわ注目されるのは、秋実さんの物語だろう。堀田家の人が心を寄せる太陽のような人。でも、数年前に亡くなったために、これまでほとんどエピソードが語られなかった。シリーズの読者なら関心があったはずだ。
秋実さんの物語が読めて、私は大満足だ。ただ、更なる欲が出て来た。意図的にだと思うが、秋実さんの物語は10ページしかなくて、他と比べても極端に短い。長編にならないかなぁ。
2014年に書いた前作の「レディ・マドンナ」のレビューで、「早く続巻を望む」と書いているけれど、その時すでに本書は出版されていた。その後に続編が出ているのも知らずにいた。現在第10弾まである。楽しみが増えた。
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