著 者:辻村深月
出版社:集英社
出版日:2015年5月25日 第1刷 2016年6月6日 第5刷
評 価:☆☆☆(説明)
著者は短編集「鍵のない夢を見る」で2012年上半期の直木賞を受賞、本書はその同時期に書かれた長編。
主人公は小林アン。中学校二年生の女子生徒。美人の母親ゆずりの顔立ちで、バスケット部に所属して、少し前までは彼氏もいて..と、クラスのヒエラルキー上位の「リア充」女子。
アンは「リア充」だけど「中二病」でもある。本人に自覚があるのが救いだけれど、相当に重症であることは疑いがない。「これから、何かを(それが何かはまだわからないけど)成し遂げる私。人と違う、私」なんてことを思っている。だから「美人なだけ」の母親のことははっきりと、「平凡な」友達のこともは心の隅で見下している。
もちろんそんなことは表に出さない。女子中学生が上手くやっていくための術は心得ている(その割には冒頭から友達に無視されているけど)。そしてアンには、もう一つ表に出さないことがある。「死」への興味がそれだ。物語は、このことが基になって抜き差しならないところまで転がって行く。
読んでいて痛々しい気持ちがした。「女子中学生は大変だな」と思った。仲がいい友達とちょっとしたことで決裂し、どうしてそうなるのかクラスの女子全員を敵にしてしまう。「自分は特別」という抜きがたい思いが、破滅に向かわせる。
私は子どもがつらい目に会う話は苦手で、この物語も私までつらくなった。それにも関わらず、ほとんど休まずに読み切ってしまった。その理由は簡単には言えないけれど「結末を知らないままではいられない」という表現が一番ぴったりくる。もちろん、物語の運びが上手いということもあるけれど。
最後に。アンが持つ「死」への興味は、親なら誰でも心配でたまらない類のものだし、人によっては嫌悪感を催すかもしれない。ちょっと距離を空けて読まないと危険。くれぐれも近づきすぎないようにご注意を。
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