著 者:石田衣良
出版社:集英社
出版日:2005年12月20日第1刷
評 価:☆☆☆(説明)
著者は、テレビのニュースにコメンテーターとして出演して、さらっと毒のあるコメントを吐いているので、本業の作家ではどんな仕事をしているのかと思い、1冊手に取ってみた。
小説雑誌に連載された10編の短編、どれも大人の愛の物語。いや、タイトルの通りに「愛がいない」ことを表現した物語。
「愛」を表現するのに、愛そのものを描写するのではなく、そこにあるべき愛や、あって欲しいと愛が「ない」ことを描写する。なかなかのテクニシャンだ。欠けている部分を描くことで、対象物の輪郭がくっきりと見えるような感じか。デザインの技法にもそういうのがあったような。
10編のそれぞれはいろいろだ。実らない大人の恋愛、熟年の愛、中年の悲哀、中にはエロ小説かと思うようなものもある。短編であるし、ミステリーでもないので、大した出来事は起きない。主人公は、それぞれ重荷を背負って生きているのだけれど、読むほうは軽い気持ちでのぞき見をしているような感覚。
収録されている10編には共通点がある。すべて神楽坂にある、1階にオープンカフェがあるマンションの住人(予定の人も含めて)の話であること。私がみたところ登場人物は重複しない。1人を除いて。(特に重要な人物というわけではないけれど、1人をいろいろなところに登場させている。著者のちょっとした仕掛けというか遊びだろう)
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)
愛がいない部屋
Amazon.co.jp ウィジェット■愛がいない部屋 (集英社文庫)
・空を分ける・魔法の寝室・いばらの城・ホームシアター・落ち葉焚き・本のある部屋・夢のなかの男・十七ヶ月・指の楽園・愛がいない部屋
「スローグッドバイ」「1ポンドの悲しみ」に続く恋愛短編集第3弾。
(まあ、なかには恋愛小説とは言えないものも収録されていますが。)スローグッドバイが20代、1ポンドの悲しみが30代の人の恋愛をテーマに書かれた小説でしたが、今回、全ての話に共通する設定はなんと場所が神楽坂の高層マンションという…