会社でやる気を出してはいけない

著 者:スーザン・ファウラー 訳:遠藤康子
出版社:サンクチュアリ出版
出版日:2017年6月10日  初版第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 発行所のマルコ社さまから献本いただきました。感謝。

 最初に。いただいた本に対して申し訳ないけれど、タイトルの「会社でやる気を出してはいけない」は、本書の内容をまったく表していない。昨今は、内容が希薄な本を、センセーショナルなタイトルで売ろうとするケースが散見される。腹立たしいけれど、それは分からなくもない。普通に売って売れないのだから。しかし本書の場合は、内容は確かなものなので、こんなタイトルの付け方は逆効果だと思う。残念だ。

 本書のテーマは、リーダーによるモチベーションマネジメント。平たく言えば「どうすれば、自分のグループがヤル気に満ちた集団になれるか」ということ。著者はこれを「モチベーション・スペクトラム・モデル」というものを用いて、とても分かりやすく解説している。

 「モチベーションを引き出す」ということであれば、目標管理や競争を取り入れて、成果を出した人にはボーナスや昇給・昇進といった報酬を与える、こんなところがスタンダードなものかと思う。ただ、著者はこういう「アメとムチ」式の方法は、「モチベーションを引き出すファーストフード」と呼んで否定する。「おいしい(魅力的だ)し、その時は満足する(成果がでる)けれど、長期的には健康を害する(組織が停滞する)」

 そこで登場するのが「モチベーション・スペクトラム・モデル」。モチベーションの種類を「無関心」「外発的」「義務的」「協調的」「統合的」「内在的」の6つに分類する。そして概ねこの順番に推移する、とする。モチベーションの「ある/なし」ではなく、「どのようなモチベーションか」に注目する。

 「会議に出席するモチベーション」で例えるとこうなる。「無関心」は「何の意義も見出せない」、「外発的」は「昇給やイメージアップに役立つから」、「義務的」は「全員が出席することになっているから」、「協調的」は「お互いに得るものがあるから」、「統合的」は「会社や仕事の目的に適うから」、「内在的」は「楽しいから」。

 そして「義務的」までを「後ろ向き」、「協調的」以降を「前向き」のモチベーションと位置付ける。ここまでは単に分析と分類なので、実践的にはあまり役に立たない。本書のキモは、「後ろ向き」の人を、どうしたら「前向き」に移行できるか?を詳述していることにある。これは役に立つ。

 私は、人数が10人に満たない小さな組織だけれど、その責任者をしている。当然、メンバーのモチベーションについて考える。これまで「ファストフード」以外のことは実践はおろか思いつきもしなかった。いい本に出会ったと思う。 

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