屍人荘の殺人

書影

著 者:今村昌弘
出版社:東京創元社
出版日:2017年10月13日 初版 12月8日 第5版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。第27回2017年度の鮎川哲也賞を受賞して、著者は本書でデビュー。そのデビュー作が「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」の3冠を達成。これは相当な強者が登場した。

 主人公は葉村譲。関西の私大である神紅大学の一回生。ミステリ愛好会の会員。「愛好会」と言っても、ミステリ愛好会には葉村の他には、会長で三回生の明智恭介しかいない。彼らは学食で適当に選んだ学生が「何を注文するかを推理する」という、生産性のない活動で推理の腕前を磨いている。

 その二人に、剣崎比留子という二回生の女子学生が接触してきた。明智が頼んでも断られ続けていた、映画研究部の合宿への参加を仲介するから、自分と一緒に参加してほしい、と言う。剣崎は「相当な美少女」でもあるし、この話は明智と葉村に都合が良すぎる。何かウラがある。

 物語は、葉村たちが参加した映画研究部の合宿を描く。その凄惨な展開を描く。タイトルの「屍人荘(しじんそう)」は、合宿地のペンションの名前「紫湛荘」をもじったもので、タイトルが表すとおり、そこで殺人事件が起きる。ある事情で、そのペンションは「クローズドサークル(密室)」になっていて「犯人はこの中にいる!」状態に..。

 「3冠を達成」も納得。「○○の殺人」というシンプルなタイトルは、ミステリーの名作を想起する。「モルグ街の殺人」「オリエント急行の殺人」「十角館の殺人」..。学園ミステリーのような出だしは、これらの名作と雰囲気を異にするし、過去のミステリーではまず起きない事態も出来する。「邪道」であるのにも関わらず、本書は「本格ミステリー」だ。それは、鮎川哲也賞の選考委員の誰もが認める。「邪道」なのに「本格」。これは面白い本に出会った。

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