著 者:ルーシー・M・ボストン 訳:亀井俊介
出版社:評論社
出版日:2008年5月20日 初版 2011年11月30日 5刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
英国の児童文学ならではの古いお屋敷や森を感じる本。
作家の上橋菜穂子さんがご自分のバックグラウンドをお話になる時に、必ず取り上げる本。この本が好きで、高校生の時に著者のボストン夫人にお手紙を書いて、ついには訪ねていったとか。どんな物語なんだろう?と興味があって読んだ。
舞台はイギリスの田舎にある古いお屋敷。主人公はトーズランドという名の7歳の少年。少年の両親はビルマに住んでいて、寄宿学校の冬休みの間、ひいおばあさんのところで過ごすことになった。そのお家がグリーン・ノウという名前のお城のようなお屋敷。
物語は、トーリー(ひいおばあさんはトーズランドのことをこう呼ぶ)が、このお屋敷の暮らしに馴染んでいく様を描く。「馴染む」というのは特別の意味がある。というのは、このお屋敷には何世紀も前に亡くなった子どもたちが「今も住んでいる」。最初は気配を感じるだけだったけれど、トーリーと徐々に打ち解けて行く。
冒頭に、お屋敷に向かう汽車に一人で乗っている時には、トーリーは「つらいことをがまんし、悲しみにたえているような顔つき」をしていた。7歳の子どもが、会ったことのないおばあさんの家に一人で行くのだからそれも当然。それが物語の終わりには「来学期になったら、また学校に行かなくちゃいけない?」と聞くほどに..。読んでいる私もホッと心が温まる。
亡くなった子どもが出てくるのだから、幽霊話には違いないのだけれど、怖い感じはまったくしない。あまりに生き生きとしているので、幽霊というよりは、時間を自由に行き来しているように感じる。
シリーズの続きも読もうと思う。
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