オルタネート

書影

著 者:加藤シゲアキ
出版社:新潮社
出版日:2020年11月20日 発行 2021年3月25日 10刷
評 価:☆☆☆(説明)

 あまり期待はしていなかったのだけれど、けっこう楽しめた本。

 第42回吉川英治文学新人賞受賞、本屋大賞ノミネート作品。

 主人公は高校生が3人。新見蓉(いるる)、東京の円明学園高校3年生、調理部の部長。伴凪津、円明学園高校1年生、SNS「オルタネート」を信奉している。楤丘尚志、大阪の高校を中退、円明学園高校にかつての同級生がいる。東京の円明学園高校を主な舞台として、3人の物語が並行して、時に少し交錯しながら進んでいく。

 本書のタイトルにもなっている「オルタネート」は、高校生専用の実名制のSNSで、お互いが「フロウ」を送りあうとメッセージなどの直接のやり取りができる。高校生に大人気だ。条件を指定すると、相性のいい会員をレコメンドしてくれる。新しい機能として遺伝子解析によって、相性のマッチングを図るサービスが加わった。凪津の信奉は、これによって理想の相手を見つけ出すことができる、という期待の裏返しだ。

 物語は、蓉の高校生の料理コンテスト「ワンポーション」への挑戦、凪津の理想の相手探し、尚志の同級生との再会とその後、を描く。こう書くと単調なように感じるかもしれないけれど、主人公3人以外に、同性愛者のダイキや、料理コンテストの対戦相手の三浦くん、凪津のクラスメイトの冴山さんらが、主人公3人の物語や自身のエピソードの中で、生き生きと描かれ、複層的な群像劇になっている。

 面白かった。時に散漫な感じを受けることもあったけれど、それぞれの高校生の暮らしぶりが良く描かれていて、興味が尽きなかった。タイトルになっている割には「オルタネート」はこの物語に必要かな?なんて思ったけれど、まぁいいか。

 私が感じた本書のキラーフレーズを引用。

 まるでガイドブック通りの旅行みたいだ。

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