ペッパーズゴースト

書影

著 者:伊坂幸太郎
出版社:朝日新聞出版
出版日:2021年10月30日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「やっぱり好きだ。こういう伊坂作品を読みたかった」という本。

 伊坂幸太郎さんの書き下ろし最新刊。

 主人公は中学校の男性国語教師の檀千郷。生徒の一人から「自作の小説を読んでほしい」とノートを渡された。その小説は、ロシアンブルとアメショーという名の二人組の話。二人はネットに公開された猫の虐待動画に声援を送るなどした人々を、探し出して制裁を加える。猫がされたのを同じ目にあわせて。

 檀先生は特殊な体質の持ち主。他人の未来が見える。誰かの飛沫を浴びると、その人の翌日の出来事が映像として見える。何かの役に立ちそうだけれど、そうでもない。他人の不幸を知っていながら、何もできない自分に悩むことの方が多い。同じ体質を持つお父さんは「つらいことばかりだ」と言っていた。

 物語は、檀先生の日常と、生徒が書いた小説と、もう一つ、5年前におきた籠城事件「カフェ・ダイヤモンド事件」の被害者遺族の会の活動の、3本が並行する形で進む。まぁお約束のようにこの3本のストーリーはやがて交差し始める。もちろん檀先生の体質も、終盤に控える大事件で大いに役に立つ。

 面白かった。本書の公式サイトのインタビューで伊坂さん自身が「得意パターン全部乗せ」とおっしゃっている。その言葉通りで、伊坂さんの作品で私が好きな「気の利いた会話」「愛すべきキャラクター」「巧みな伏線」が全部揃っている。さらには生徒が書いた小説という「作中作」には、「こんなことするの?」という遊びや、「こんなことあるの?」という巧みさがあって楽しかった。

 作品間リンクもいくつかある。伊坂幸太郎ファンは必読。

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