どちらかが魔女

著 者:森博嗣
出版社:講談社
出版日:2008年8月28日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 また森博嗣さんにやられてしまった。完全にだまされた。

 巻末の初出の一覧によると本書は、講談社の文芸雑誌「メフィスト」他に掲載された短編で、一旦は別の短編集に収録されたものから、8作品を取り出して再編した短編集らしい。登場人物は、国立N大学助教授の犀川創平や、その研究室の学生の西之園萌絵ら。
 彼らは、著者のS&Mシリーズ、Vシリーズ、Gシリーズと呼ばれる作品群の主要な登場人物でもあるらしい。「らしい」が2回続いてしまったのは、私はこういったことを全く知らずに本書を手にして読んで、後付けの知識で知ったからだ。

 8編の作品は、どれもちょっとしたミステリーを犀川らが解き明かす趣向。大学の構内に出現する「踊る紙人形」の謎や、30人もの人間が忽然と消えた事件、誘拐事件の身代金が入れ替わってしまった事件、小さな島の怪異現象など。深刻なものではなく「謎解き」を楽しむトレーニングのようなもの。実際にいくつかの謎は、西之園家の晩餐の話題として用意されたものだ。

 それで冒頭の「完全にだまされた」について。それぞれの作品の謎解きもなかなかのもので楽しめたが、それとは別に、著者はこの本1冊を使ったトリックを仕掛けていた。最後の最後で本書が全く違って見えてくる仕掛けだ(くれぐれも最後を先に読んでしまわないように)。
 一度短編集として出した作品をいくつかピックアップして1冊にしたのはこのためだったのだ。著者のイタズラっぽい笑顔が目に浮かぶ。ところで、上に挙げたシリーズの既読者は、馴染みの登場人物が入れ代り立ち代り出てくる本書には別の楽しみがあるはず。でも、ある程度事情を知っているとすると、最後のトリックはどう映るのだろう?

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