アマルフィ

書影

著 者:真保裕一
出版社:扶桑社
出版日:2009年4月30日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者の作品を読むのは「デパートへ行こう!」に続いて2冊目。コミカルなドタバタが楽しかった「デパートへ行こう!」とは打って変わって、型破りな外交官が活躍する、国際問題やテロリズムも絡む硬派なサスペンス。どうやらこちらが著者の本領のようだ。

 主人公は黒田康作。外交官で「邦人保護担当特別領事」という肩書を持つ。その実態は、外務省トップの事務次官の特命を受けるテロ対策・要人警護のスペシャリストだ。今回は、外務大臣の訪伊を受けてローマの日本大使館に赴任する。(ちなみにタイトルの「アマルフィ」はイタリア南部の観光地の名前。アマルフィ海岸は世界遺産になっている。)
 そこに、日本人少女の誘拐事件が起きる。本来、捜査権限を持たない外交官は、その国の警察に事件の捜査を任せ、オブザーバーに徹するのが原則なんだそうだが、黒田は「邦人保護担当」という肩書ゆえ、それが本務だとして、少女の母親に協力し事件に深く関わっていく。そして、事件は更に大きな事件へと発展していく。

 とにかく黒田がカッコいい。組織と自己の保身が優先の大使館員たちの中にあって、その正義感と行動力が(それと裏腹の無謀さも)抜きんでている。そして、少女の母親である紗江子がまたまた魅力的だ。行動力と知性を感じさせる男性と被害者の肉親の女性。どことなくダン・ブラウンの作品を思い出させる。映像向きの物語だというところも同じだ。

 映像向きなのはそのはずで、この物語はフジテレビ開局50周年記念映画「アマルフィ 女神の報酬 」の脚本作りに著者が参加したことから生まれたものなのだ。映画は監督と共同でシナリオを完成させ、本書は著者の当初のプロットを基に仕上げたそうだ。したがって、映画と本書では相違する部分が多い。比べてみるのも良いだろう。
 もう一つ映像関係のニュース。黒田を主人公としたテレビドラマ「外交官・黒田康作」が、来年1月からフジテレビで放映される。映画の続編の位置付けで、黒田を演じるのは映画と同じく織田裕二さん、共演は柴咲コウさんという豪華キャスト。ドラマのプロデューサーは「「黒田康作」というキャラクターを1作で終わらせるのはもったいない」と言ったそうだ。私もそう思う。(が、著者との関係はどうなってるんだろう?)

 関係ありそうでなさそうなことなんだけれど、私はNHKの「世界ふれあい街歩き」という番組が好きなんですが、中でも「アマルフィ」の回はとても印象深い回でした。

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