中国人の99.99%は日本が嫌い

書影

著 者:若宮清
出版社:ブックマン社
出版日:2010年10月25日 新装版初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 本書の場合、本の紹介の前に著者の紹介をした方がいいだろう。中国・台湾・他のアジア諸国について、著者の専断とも言える論評の数々が披露されているのだけれど、こういう場合、それがどういう人の口から出たものなのかが非常に重要だからだ。

 その点、著者は「この人の言うことが本当なのかもしれない」と思わせる経歴の持ち主だ。1970年に戒厳令下の台湾の東海大学に留学、4年間の4人部屋の寮生活を送る。その後、フィリピンや中東、エチオピア、スーダンと紛争地帯などで活動する。
 ここまででも、タダ者じゃないことは分かるのだが、この後がさらにスゴイ。1983年にフィリピンのマニラ国際空港でベニグノ・アキノ氏暗殺事件が起きるが、著者はその時アキノ氏に同行していた。また北朝鮮との人脈を作り、拉致被害者家族の帰国を得た、2004年の小泉総理訪朝につながる裏面工作に関わる。著者の活動についての是非は様々に言われているが、国際政治の現場にいたことは揺るぎない事実だ。

 そして本書について。本書は実は2006年に出版した書籍のプロローグを新しくした新装版だ。だから、ざっと5年ほど前の中国の状況を基に書かれているのだが、不思議なぐらい現在とマッチしている。いや現在は、著者が捉えた「中国像」がより明確に姿を現していて、その見立ての確かさが伺えるとも言える。
 その主張を切り詰めて言うと「「民度」では、日本人は中国人より優れているかもしれないが、「錬度」では遥かにおよばない。だからナメていたら大変なことになる」ということになる。「錬度」とは、したたかさ、戦略性などを表す「鍛えられた駆け引きの力」のことだ。

 タイトルに沿う形で「中国人がいかに日本を嫌っているか」の数々が書かれているが、逆説的だけれど、「中国人は日本が嫌い」かどうかは、この際あまり関係ない。彼らの関心は「好き嫌い」よりも「勝ち負け」なのだ。これは言葉の綾だけれど、「勝つ」ために必要なら「好き」にぐらい平気でなるかもしれない。
 中国の強気の外交を「中国国内向けのポーズ」、反日デモを「中国政府への不満のはけ口」と、日本の「識者」は分かったような分析を披露する。必ずしも間違いではないが、そんなに単純ではない。理解したつもりになって「大人の対応」をしているとやられてしまう。

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