著 者:橋田信介
出版社:アスコム
出版日:2004年1月20日第1版 3月1日第2刷
評 価:☆☆☆(説明)
ベトナム戦争から「爆弾を落とされる側」から戦場を撮り続けた、戦場カメラマンのイラク戦争のルポ。著者は数ヵ月後にイラクに戻り、移動中に銃撃を受けて死亡している。
この人が語る戦場には圧倒的な臨場感がある。そして何故か楽天感が漂う。これは多分、戦場のありのままを飾りのない文章で伝えているからなのだと思う。最後になって著者自ら踏み越えてしまったが、著者の戦争記者としての哲学は、戦場を見て「戦況」は語っても「戦争」は語らないことだそうである。「戦争」は政治的なもので、戦場を取材しても分からないからだそうだ。
著者は、この本の中でも何度か死にそうになっている。爆風で窓が吹っ飛ぶベランダにいたこともあるし、2度も米軍の戦車に砲台を向けられている。完全な混乱の中なので、死ぬか生きるかは偶然に左右されている。
そんな中で、ホテルは営業していて朝食もちゃんと出る。街ではお茶屋さんも居たそうだ。砲弾が飛び交う下でも、普段の生活も営まれている。アラブの民の強さなのか、人というのは元来強いものなのか。報道される情報だけでは、見落としがちなことだと思う。
気が重くなるような話も。イラク戦争は現場の取材では米軍の圧勝だったそうだ。国連査察で身ぐるみ剥いでから米軍は来たわけで、戦いとしては実にアンフェア。さらに、バグダッドで唯一爆撃されなかったビルは「イラク石油公社」。オイルが戦争の目的だったと言われても仕方ないのではないか。
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