著 者:フィリップ・プルマン 訳:山田順子
出版社:東京創元社
出版日:2010年11月25日初版
評 価:☆☆☆(説明)
「マハラジャのルビー」「仮面の大富豪」に続く、「サリー・ロックハートの冒険」の第3作。前作の「仮面の大富豪」から3年後。前作の最後で、愛するフレデリックの子どもを身ごもっていることが分かった。その子どもハリエットは2歳になっている。
サリーの「財政コンサルタント」としての仕事も軌道にのり、共同経営者になっている「ガーランド・アンド・ロックハート写真店」も順調。愛娘のハリエットも、周囲の人びとの愛情を受けて、すくすくと育っている。順風満帆といったところだった。
ところがある日サリーは、ハリエットの親権を求める離婚訴訟を起こされる。「未婚の母」であるサリーには身に覚えがない。ましてや相手は名前も聞いたことのない男。しかし英国のビクトリア時代の未婚の母は世間の風当たりも強い。しかも証拠は巧妙に捏造されていて、完全に罠に嵌められたらしい。「でも、なぜ?ハリエットの親権を?」謎は杳として知れず、敵の姿さえ見えない...。
今回も、前作までと同様に、サリーが持ち前の行動力で運命を切り開いていく。しかし、今回の敵は強大な力を持っているようで、用意周到に様々な罠を張り巡らせていた。サリーの行動はその先々で見えない壁に阻まれる。そして、最大の危機を迎える。
中ごろまでは、「これじゃジリ貧だ」という感じ。読んでいても気が滅入るほどだった。状況はページを追うごとに悪くなり、サリーに出来ることはドンドン少なくなっていく。そこに一条の光のような活路を見出せたのは、金持ちの家に生まれたサリーには、今まで縁が薄い層の人びとのお陰だった。読み終わって、本当にホッとした。
このシリーズは4部作で、3作目の本書は起承転結で言えば「転」に当たる。サリーは今回、今まで知らなかった世界や人々と出会い、確かに転機を迎えたと言える。最終巻の次回作が楽しみだ。
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