ほめことば練習帳

書影

著 者:山下景子
出版社:幻冬舎
出版日:2008年3月30日 第1刷 2024年2月20日 第2刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 多くの人に「たくさんのほめ言葉を口にしてほしい」という著者の願いに共感した本

 5つの章に分けて130項目のほめ言葉を紹介。最初のいくつかの項目を挙げると「凄い」「素晴らしい」「兜を脱ぐ」「目覚ましい」「見事」「立派」「目の肥やし」「流石」...といった具合。それぞれの項目に類語や関連語も紹介されているので、巻末の索引によると360あまりのほめ言葉が、180ページほどにぎっしりと詰まっている。

 項目ごとに、その言葉の語源や用例の紹介があることもあれば、ちょっとしたエピソードなどが挟まれることもあって、辞書のようなコラムのような体裁。文章の量も項目ごとに一定ではなくて、知り合いの話を聞いているような感じで読める。

 ただ、私は通読したけれど、読む人によっては通読するのは少しつらいかもしれない。それが興味深い話だとしても、知り合いが話す130個もの「言葉トーク」を聞き続けるのはやっぱりつらいのと同じように。 気が向いたときに読む、気になった言葉について読む、というのに向いているかもしれない。

 改めて「はじめに」の冒頭を要約して紹介する。

 「ほめる」は「秀(ほ)」を活用した「ほむ」が語源で、古くは「祝ったり祝福したりする」という意味で使われていたそうだ。現代の「よい評価を与える」という意味より「素晴らしいことを共に喜び合う」という方が、本来の「ほめる」に近いかもしれない、と著者は言う。

 そして今、この「本来の意味でのほめ言葉」が大切になってきているのではないか?。さらに、健やかな時は自然と気持ちのいい言葉が、少し病んでいるときには羨みや卑下の言葉が出てくる。幸せな人ほどよくほめる。ならば逆手をとって、ほめることによって幸せになることもできるのではないか?と。

 このことに私は共感を強く感じた。著者がこう考える背景には、人を中傷したり蔑んだりする言葉が、ネットを中心として世の中にあふれる、著者の思いとは真逆な現状への、哀しみや危機感があると思う(本書は2008年の発行なので今よりはマシだったと思うけれど)。多くの人がほめ言葉がもっとを上手にたくさん使うようになれば、世の中は少し生きやすくなるだろう。

 最後に。著者の文章にはある特長がある。項目の最後に「うまいことを言う」のだ。例えば「流石」という項目の文章を「流石」という言葉で締めるとか。いわゆる「オチ」がある。もしかして関西の人?と思って確かめると..神戸市生まれ神戸市在住。郷土の先輩でした。

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