著 者:三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵
出版社:文藝春秋
出版日:2010年10月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
本書は、スポーツ用品メーカーのアシックスの「マラソン三都物語」というプロモーションで、3人の人気女性作家がそれぞれ書き下ろした短編を収録したもの。その3人というのは、三浦しをんさん、あさのあつこさん、近藤史恵さん。これは贅沢だ。
「三都物語」の「三都」とは、ニューヨーク、東京、パリの3つ。それぞれで毎年3万5~6千人もの市民ランナーが参加する、シティマラソン大会が催されている。三浦さんが「ニューヨークシティマラソン」あさのさんが「東京マラソン」、近藤さんが「パリマラソン」。それぞれのマラソン大会を題材にした物語を書き下ろしている。
マラソン大会当日を描いたのは、三浦さんだけ。主人公を大会の参加者にしなかったのは、あさのさんだけ。主人公が陸上経験者じゃないのは、近藤さんだけ。三者三様だ。しかし、共通するものも見える。それは「回復」の物語だ。
3人の主人公たちは、それぞれ挫折を経験している。いや、それは挫折とも言えないかもしれない。人生のどこかに置き忘れてしまったもの。そこの部分には穴が空いているので、本人もそうと気づかないけれど満たされない思いが募っている。そんな感じ。
その穴がマラソンに関わることで埋められる。きっと「走る」ということは、人間の欲求や感情と深く結びついているのだと思う。小さな子どもたちを広い場所に連れて行くと、意味もなく駆け出すのは、それが気持ちいいからだ。
そう、元来「走る」ことは気持ちいい。タイムや順位に拘れば辛いことが多くなる。しかし3万5千人もの参加者の多くは、気持ちよさを求めて集うのだろう。ネットには各大会の優勝記録が載っているけれど、記録には残らない何万何十万もの参加者と、その周辺の一人ひとりに物語があることを、本書は教えてくれる。
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