シマウマの逃げ方 ライオンの追い方

著 者:和田典之
出版社:パレード
出版日:2012年7月14日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者が代表取締役を務める、株式会社ワダエンジニアリングさまより献本いただきました。感謝。
 著者は、航空宇宙産業の会社経営だけでなく、クラフトアートを用いた個展の開催や音楽アルバムの制作などの多彩な活動をされている。また、社会教育関係の要職も務めておられるそうだ。

 本書は、主人公が「ある朝、目覚めたらシマウマになっていた」「翌朝、目覚めたら今度はライオンに」、という不思議な体験を綴った物語だ。その物語を寓話として「組織とルール」「働く意味」「変化への対応」「快適な社会」の4章に分けて、それぞれテーマへの「気付き」を促す。

 例えば第1章「組織とルール」では、組織(群れ)を無視して孤立すれば生きてゆけない、と説く。シマウマやライオンの暮らしはシンプルだ。助け合うことやルールと役割に従うことは是非もない。そうしないと死んでしまうのだから。これを以て著者は、「助け合うことで強く生きられる」ことや「ルールを守る」ことを教訓として強調する。

 本書で示される教訓は数多く、「原点を知って問題解決」「ピンチはチャンスである」という「ビジネス指南」的なものと、「ルールを守った人が得するシステム」「品格を持って生きる」という「人や社会のありよう」を述べたものに大きくは分けられる。これは憶測だけれど、著者の経営者としての顔と、社会教育に携わる識者としての顔が、それぞれ表れているように思う。

 教訓には、違和感を覚えるものもあった。例えば「最後に笑うのは真面目に生きる人」と言われて、素直に「なるほどそうだ」とは言えないぐらいには、私は世間ずれしてしまっている。しかし、教訓を個々にではなく全体として見る観点が大事だ。少し離れて俯瞰すると、すべての教訓は、「全体最適」としての「快適な社会」に向いていることが分かる。本書はビジネス書ではあるけれど、著者の真意は「快適な社会」の実現を目指す、という方にあるのではないかと思う。

 最後に本書の読み方について。本書の構成は、第1章から第4章までのそれぞれの章に「シマウマの物語」と「ライオンの物語」があり、その後ろに「この物語の教訓」という章が巻末にある。最後に「教訓」をおさらい、というわけだ。
 しかし私は「教訓」を読むころには、最初の方の物語の詳細は忘れてしまって、何度も読み返すことになった。もし、本書を読まれるのなら、「シマウマの物語」「ライオンの物語」が終わる度に、「教訓」の該当する部分を読んで、最後にもう一度「教訓」を読んだらいいと思う。きっと「気付き」が、頭にしっかりと残る。

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