著 者:柳広司
出版社:角川書店
出版日:2011年6月25日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
本書は、2009年に吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞、本屋大賞第3位になった、スパイ・ミステリーだ。
日中戦争が勃発した昭和12年に、大日本帝国陸軍にスパイ養成学校、通称「D機関」が設立された。そこを統括する結城中佐は、かつてはスパイとして敵国に長年潜伏し、捕縛され拷問を受けるも脱走に成功した経歴を持つ。
本書は、D機関出身のスパイらを描く短編集。表題作「ジョーカー・ゲーム」の他、「幽霊(ゴースト)」「ロビンソン」「魔都」「XX(ダブルエックス)」の全部で5編を収録。
「ジョーカー・ゲーム」とは、D機関の学生たちが興じていたゲームのこと。早く言えばルール無用の騙しあいゲーム。例えばポーカーで、第三者の協力者を使って、他のプレイヤーのカードを盗み見てもいい。ただその協力者が、本当に自分に協力しているのかどうかは分からない..まぁ、スパイ活動のシミュレーションなわけだ。
5編の作品は少しつづ傾向が違ってどれも面白かったが、やはり「ジョーカー・ゲーム」が良かった。「ジョーカー・ゲーム」では、D機関が憲兵隊に偽装して親日家の外国人の家を捜索する。単純な出来事のようで、実は幾重にも陰謀やウソが塗り重ねられた、陸軍参謀本部とD機関がせめぎ合う事件だった、という物語。
他の作品についても簡単に紹介する。「幽霊」は、外国の総領事への潜入捜査。結末は少しユーモアもある。「ロビンソン」は敵地からの脱出劇。結城中佐の深謀が光る。「魔都」は内通者を探る極秘任務。混乱した上海の街が悲しい。「XX(ダブルエックス)」は二重スパイの捜査。スパイも孤独ではなかった。
実は作品を読み進めて行くと、結城中佐の人間性に新たな面が見えたり、D機関の学生の面々の心の内が少しわかったりする。なかなかニクイ構成になっている。
※2014.3.6追記
「ジョーカー・ゲーム」が亀梨和也さん主演で映画化され、2015年公開予定です。
映画「ジョーカー・ゲーム」公式サイト
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「ジョーカー・ゲーム」 柳 広司
旧日本軍のスパイ学校・D機関を舞台にしたスパイミステリ小説「ジョーカー・ゲーム」読了。
いやー、面白かった!痛快なミステリ仕立てのこのスパイ小説は、ドキドキハラハラしながらページをめくる手が止まりません。私の大嫌いな戦前の軍国主義的空気はほとんどなく、逆に固定概念にとらわれないことが信条のD機関は頭脳ゲームを駆使して二重三重に張り巡らされたスパイゲームを解いていきます。
「ジョーカー・ゲーム」に収録された短編は、D機関のスパイが潜入し情報を得るものや、当初、D機関と関わりをもたない人物か…
『ジョーカー・ゲーム』
柳広司 『ジョーカー・ゲーム』(角川文庫)、読了。
これは、さすがヒットしているだけあって、面白かったです。
第二次世界大戦中に陸軍内に極秘に設立されたスパイ養成機関。
そこの訓練生や卒業生……