カンガルー日和

書影

著 者:村上春樹
出版社:講談社
出版日:1986年10月15日発行 2001年7月31日第40刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 20年近く前に出た村上春樹の短篇集。「象の消滅」に収められていた短篇のうち、「4月のある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて」が収められている。他の短篇が収められた本は家にあったのに、これがなかったので、買ってきた。

 なんとも言えない村上作品の空気はあるものの、濃密な感じではなく、むしろさらっと読めるショートショートのような短篇が並ぶ。最後の「図書館奇譚」を除いては。
 これらの短篇は、トレフルという雑誌に連載していたものらしい。1981年4月から83年3月までとある。ちょっと調べてみた。「図書館奇譚」は、1982年6月号から、羊男が出てくる第2回目は7月号。「羊をめぐる冒険」は、群像の同じ年の8月号、つまり、「図書館奇譚」の方が早い。
 どういう雑誌なのかよく分からなかったのだけれど、読者はどう思っただろう。まぁ、そんなこともあるよね、という軽い感じの読み物がそれまでは続いていたのに、いきなり羊男、それも頭を割って脳みそを吸う、というのだから尋常じゃない。驚いただろう。

 ところで、村上作品には図書館が良く出てくる。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」「海辺のカフカ」。図書館、古い書物が集積している場所に対する微妙なセンスがここに現れているように思う。

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