著 者:夏川草介
出版社:小学館
出版日:2012年8月13日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「神様のカルテ」「神様のカルテ2」に続く第3弾。私が読んだ昨年8月発行の初版第1刷についている帯には「累計218万部」とある。それから1年になろうとしているので、もしかしたら300万部に到達しているのかもしれない。来年には「神様のカルテ2」の映画が公開される。今は未達でも300万部超えは時間の問題だろう。
前作から引き続き、舞台・登場人物はほぼ同じ。松本市にある民間病院が舞台で、そこの内科のお医者さん、栗原一止(いちと)が主人公。他の登場人物は、病院の医師や看護師と患者、一止の妻のハルと一止が住むボロアパート「御嶽荘」の住人ら。
ただ、何から何まで前作と同じでは、空気が澱んでしまう。新しいドラマを生むためには、そこに外の風を入れる必要がある。その「そとの風」が、小幡奈美という内科の女医。医師になって12年目、消化器の専門家のベテランで、人当たりが良くてしかも美人。リンゴを丸かじりするのはちょっと意外だけれど、そのギャップさえも魅力的に見える。
これだけなら、多忙を極める医療現場に吹く涼風だけれど、もちろんそんなことはない。看護師長に「意外に人を見る目がない」と言われた一止は、なかなか気が付かないけれど、小幡先生には問題があり、曲げられない信念もある。そしてその信念は、一止に影響を与えずにいない。
「あせってはいけません。ただ、牛のように、図々しく進んでいくのが大事です。」繰り返し登場する夏目漱石の名言が心に残る。随所に「いい話」や「出会いと別れ」を入れながら、今回は物語が大きく動いた。次回はあるのだろうか?
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