著 者:畠中恵
出版社:新潮社
出版日:2007年5月30日 発行 6月20日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「しゃばけ」シリーズの第6作。表題作「ちんぷんかん」を含む5つの短編を収録した短編集。
今回はいつもと少し趣向が違う作品が何編かあった。
このシリーズの主人公は、江戸の大店の跡取り息子の一太郎なのだけれど、表題作「ちんぷんかん」は上野にあるお寺の修行僧、その次の「男ぶり」は一太郎の母のおたえの物語で、この2編は主人公がいつもと違うのだ。
私は以前からおたえのことが気になっていた。一太郎の祖母のおぎんが実は人ならぬ妖で、その娘のおたえを通して一太郎にはその妖の血が受け継がれている。だから一太郎には様々な妖たちが見える、というのがこのシリーズの仕掛け。
当然おたえにも妖たちが見える。いろいろなエピソードがありそうなものだ。それなのに、これまでは物語にさっぱり絡んでこない、セリフさえほとんどなかった。だから気になっていたのだ。この度おたえの口からその過去が明かされたのは「待ってました」という感じだった。
趣向が違うという意味では「鬼と小鬼」もそうだ。舞台が何と賽の河原だ。一太郎は病弱で、何度も病で死にかかっている。しかし今回は、いよいよあの世へ向かって旅立ってしまったわけだ。
もうひとつ。「はるがいくよ」は、これまでになく抒情的な作品。これからの桜の季節に読むと、感涙を誘うかも。
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