統計でウソをつく法

著 者:ダレル・ハフ (訳:高木秀玄)
出版社:講談社
出版日:1968年7月24日第1刷 1981年3月27日第26刷
評 価:☆☆☆(説明)

 著者は、社会心理学、統計学、心理テストなどの研究者。本書では「統計」を使ってウソというか、目的とする結論をうまく導き出す方法がいくつも紹介されている。もちろん、そういうことをするための手引書ではない。統計情報やグラフを見るときにはよく注意することを促すための本である。
 内容は、サンプリングの偏り、平均の取り方といった、調査集計の際のウソ、グラフの書き方などの表現の際のウソ、こじつけや過大評価といった分析の仕方のウソ、などである。
 実際に、統計や記事を前にして気付くことができるかどうかは別にして、まぁ、多くは真っ当な批判精神がある人ならば、統計というものに対して、何となく信用ならないと感じていると思う。(調査資料を振りかざして、唯一絶対の真理のように主張する人もいるけど)それぞれの事例は、なるほどとは思うけれど、目新しいものではなかった。

 1つだけ、注目したのは、「相関関係」と「因果関係」の混同について指摘した部分。AとBが同時に、または前後して起きる場合、「AとBは相関関係が強い」とは言えるが、「AはBの原因になっている」と言ってしまうのは、短絡的だという。
 ABに共通の原因があれば、相関関係は強くなる。だからと言って、Aを抑制してもBは減らない。もっと言えば、偶然同じ傾向を示すことだってある。
 何年か前に、「自然体験、生活体験が豊富な子どもは、正義感、道徳観が強い」という、文科省の調査を見て、なるほどそういうものか、と思った経験がある。しかし、これを持って、正義感のある子どもに育てるために、せっせと自然体験を子どもにさせる、というのは短絡的なのだ。
 「テレビを長時間見る子はキレやすい」と言って、「子どもにはテレビを見せるな」というのも短絡的。「日に5時間以上テレビを見る子にキレやすい傾向が強い」という調査も見た。これなんか、そもそも学校に行ってて、家に居る時間が限られている(午後4時に帰って10時に寝れば6時間だ)子どもが、5時間以上もテレビを見ている家庭環境ってどうよ、と言いたい。家庭環境という共通の原因が生み出した相関関係ということだと思うが、どうだろう。

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