ファンタジーを書く ダイアナ・ウィン・ジョーンズの回想

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:市田泉、田中薫子、野口絵美
出版社:徳間書店
出版日:2015年3月31日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本書は2011年の3月に亡くなった、英国の児童文学作家で「ファンタジーの女王」と呼ばれた、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの講演やエッセイ、書評などをまとめたもの。私は著者の作品が好きで、これまでに30数作品を読んできた。

 偉大な作家が亡くなった後に、遺稿集が出版されることは珍しくない。しかし本書はそれらとは違う。本書は著者がガン宣告を受け余命数か月と告知された後に、著者自らが関わって編纂したものなのだ。

 その経緯が書かれた「著者前書き」を読んで衝撃を受けた。整理のために、長く引出しにしまわれた講演の原稿や、雑誌や新聞の原稿を再読するうちに、こう思い付いたそうだ。

 「これを本にしたら学生も楽しみ、おもしろがってくれるかもしれない。創作を教える教師や大学の講師に役立つかもしれない」。自らの死を前にこんなことを考えていたのだ。この前書きには、亡くなる4カ月前の日付が記されている。

 そして内容は宝物のようだった。他に人にとってもそうだとは言わない。たぶん違うと思う。しかし私にとっては、よくぞこれを出版し、また日本語版を出してくれた、と感謝の気持ちが湧いた。

 著者の生い立ちやいくつかの作品の創作の裏話が聞けた。「あの作品のあの人と、こっちの作品のこの人は、同じ人物の違う面を描いた」なんてことを知ることができた。

 本人のことだけではない、オックスフォードで教わった、J.R.R.トールキンやC.S.ルイスの授業の批評が書かれている。それから「ハリー・ポッター」のことも。著者の作品と似た、ユーモアを持ちつつ辛口の語り口で。

 ファンなら必読。そして、亡き著者の魂の安らかならんことを祈って。

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