著 者:森 博嗣
出版社:中央公論新社
出版日:2006年6月25日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
「スカイ・クロラ」 シリーズの第4作。番外編を除いた本編は5作品だから、残すところあと1つ。既に折り返しを過ぎて、これから終盤に向かうところだ。物語は収束してくるのか?..まぁ、そんなわけはなくて、まだまだ物語は展開を続けている。
今回の主人公「僕」は、クリタジンロウ。「スカイ・クロラ」で、カンナミの前任者として名前だけ登場している。そして、既に死んだことになっている。(クサナギが殺した、という噂もある)
ここに来て、新しい主人公を出してくるのだから、物語は収束どころではない。まぁ、時系列で並べれば本書は3作目、起承転結の「転」と考えれば、物語の構成の常道とも言える。
クリタは、今までの主人公と比べると少し地味だ。天才的なエースパイロットであるクサナギやカンナミと比べられては気の毒だが、取り立てて特長がない。基地の同僚にも「基地の飛行機乗りの中では一番、普通」と評されたこともある。
「普通」ということでさらに言えば、クリタはキルドレだが普通の人間に近い部分を持っている。「愛情」とは何かを考えたり、地上での安全で穏やかな生活に価値を見出してみたり。
特に、「愛情とは何か」「この感情は愛情なのか」「愛情があれば争いは起こらないのか」と、クリタは繰り返し「愛情」について考える。他人の感情にあまり興味がないキルドレとしては珍しい。ただし、彼の問いは「愛情」についての普遍的な問いでもある。キルドレではない私たちも、面と向かって問いかけられて、キチンと答えられる人は少ないと思う。
彼のこうした性格が、物語の進展に関わりがあるのかどうかは分からないけれど、語り部としては、ちょっと変化があって良いのかもしれない。
前作の「ダウン・ツ・ヘヴン」で、物語の背景で行われている戦争について、かなり明らかになってきたように、今回は、キルドレについてのある事実が明らかになっている。そして、その事実はクサナギの身に深く関わってくる。本書は、大きな問題をはらんだまま終わっていて、次回作への期待が高まる。
にほんブログ村「森博嗣ワールド 」ブログコミュニティへ
(森博嗣さんについてのブログ記事が集まっています。)
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)