4.エッセイ

美女と竹林

書影

著 者:森見登美彦
出版社:光文社
出版日:2008年8月25日初版
評 価:☆☆☆(説明)

 小説宝石という月刊の文芸雑誌に2007年から2008年に掲載されたエッセイが、17編収められている。タイトルは、著者がやみくもに好きなもの2つなんだそうだ。「美女」は、「どうして」と聞くまでもない、聞いたところで仕方ない。
 「竹林」の方は「どうして」と聞かずにはいられない。しかし、どうして好きなのかは、さっぱりわからない。確かに言えることは、著者が今現在は「竹林」を愛して止まないことだ。それは、本書に収められているエッセイのテーマが、「竹林の竹を刈る」という一点であることからも分かる。著者は、実際に知り合いが所有する竹林に出向いて、そこを整備すべく、愛すべき友人や編集者さんとともに、竹を刈るのである。

 何とも要領を得ない書籍紹介たが、それもやむを得ないこととご容赦願いたい。何しろ本書そのものが、要領を得ない不思議なシロモノなのだ。冒頭に「エッセイ」と紹介したが、エッセイとは、見たり聞いたり感じたりしたことを散文としてまとめたものを言うとしたら、本書に収められているのはエッセイではない。
 著者は自身のことを「妄想作家」と称しているが、著者の妄想が何の前触れもなく、文章に入り込んでくる。言い方を違えれば、ウソや作りごとが混じっている。これでは、エッセイとは言えないだろう。

 しかし、これがエッセイかどうか、などという瑣末なことにはお構いなく、本書は面白い。著者の他の作品が「妄想小説」ならば、これは「妄想エッセイ」だ。何のことはない、著者の他の作品に漂う雰囲気、夢と現を行ったり来たりする「森見ワールド」そのままの本なのだ。
 だから、森見ワールド未体験の人にとっては冒険。きっと戸惑うと思う。著者の妄想に、そのヘタレ具合に。逆に著者のファンにはオススメだ。随所にちりばめられた、ちょっとした言動に、笑いのツボを刺激されることだろう。

 最後に、本の編集者という仕事は大変ながら楽しそうだ、という感想を持った。

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