アホでマヌケなアメリカ白人

著 者:マイケル・ムーア (訳:松田和也)
出版社:柏書房
出版日:2002年10月15日初版 2003年3月5日第18刷
評 価:☆☆☆(説明)

 原題は「Stupid Whitemen」、バカ白人ということになるか。もちろん、著者の意図は白人全部を指すのではなく、アメリカの白人を指しているようなので、この邦題は的を射たものと言える。
 内容は、アメリカの、またはアメリカ人の可笑しなところ、モラルの無さを、これでもかとこき下ろすもの。2000年の大統領選でのブッシュ陣営のあくどい行いから始まり、根強く残る黒人差別や学生の無知、教育の荒廃。そして、軍事予算やエネルギー消費量、批准していない国際人権条約の数、強姦の件数と不名誉なナンバーワンを数多く持っていることなどを多く書き連ねる。ウソではないにしても、一方的な見方に過ぎることは確かだろう。
 しかし、「ウソではない」とすれば、アメリカという国はなんと傍若無人で病んだ国だろうと思わせるに充分だ。これで、自分たちの国が一番だと思っているなんて。Stupid Whitemen。
 と言うように、この本は暴露本なのだが、出色は出だしの2000年の大統領選の記述だ。ブッシュ陣営は、選挙を前にして、フロリダ州で民主党の支持者が多い黒人を中心に、2万人ほどの有権者から選挙権を奪っている。重犯罪者には選挙権がないからだが、実際には、犯罪者と名前が似ているからとか、誕生日が同じだからといった(それもテキサス州の犯罪者と)理由で選挙権を奪われた人も多くいたそうだ。
 それだけではない。フロリダ州知事はブッシュ大統領の実弟だし、ブッシュ当選を最初にフライング気味に報じたのは、フォックスTVのブッシュの従兄弟、票の数え直しを命じた最高裁長官も共和党の配下の人だ。フェアであることを何よりも重んじるアメリカの大統領選がこんな状態で行われたことに驚きを禁じえない。
 そして、アメリカは、そうして大統領になった人を再選してしまった。イラク戦争など、政策の実績よりも、キリスト教的価値観を共有していることに判断基準を置いて。驕慢と言わずに何と言おう。

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