サー・ガウェインと緑の騎士 トールキンのアーサー王物語

書影

著 者:J・R・R トールキン(訳:山本史郎)
出版社:原書房
出版日:2003年2月28日 第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 トールキンが書いたアーサー王物語の1つ「サー・ガウェインと緑の騎士」と、詩の「真珠」と、ギリシャ神話を基にした「サー・オルフェオ」の3編を収めたもの。
 この3編とも中世の英国で書かれたものらしい。つまり、これらは、純粋な意味でのトールキンの作品ではない。中世の英語で書かれた物語をトールキンが現代英語に訳し、それをさらに日本語に訳したものを読んでいることになる。
 実は、「サー・ガウェインと緑の騎士」を読んで、前に読んだサトクリフが書いた物語と、かなり細部まで同じであることに驚いたのだが、そういう事情なのだ。つまり、基になる話(作者不詳)があって、それを二人が現代語訳を発表し、その日本語版が日本で出版される。瀬戸内寂聴と谷崎潤一郎が源氏物語をそれぞれ現代語で発表し、それを英語にしたようなもの。それぞれの訳者が現代語に込めたニュアンスなど伝わりようもないのだから、「同じだ」と思っても仕方ない。
 現に、古英語では頭韻が多用されていて、トールキンは現代語訳の際にもそうした響きを伝えようとしたらしい。しかし、日本語にした時にそれを伝えるのは至難の技。
 80ページ近くの詩としては大変に長い「真珠」が、いささか退屈だとしても、トールキンの責任ではない。宗教的社会的なバックグラウンドが異なっているので、解説を読むまで何が何だか分からなかった。

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