著 者:村上宣寛
出版社:日経BP社
出版日:2005年4月4日初版 2005年5月11日3刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
血液型による性格判断からロールシャッハテスト、矢田部ギルフォード、クレペリン検査と、様々な心理テストの「いい加減さ」をバッサバッサと切りまくる。著者は富山大学の教授で、認知心理学の先生で、学生にこういった性格診断についても教えているそうだ。もちろん、こんなものはウソッパチだと言いながら。
血液型による性格判断は、前からウソくさいと思っていた。統計をとればそういった傾向が見られるという説明はよく聞くが(A型は神経質、B型は自己中心的といったたぐいのもの)、その因果関係は統計では証明できない、と。
ところが、コトはもっと悪質で、統計でそういった傾向がでることさえないのだそうだ。つまり、全くのデタラメ。1933年に日本法医学会総会で正式に否定されている。
こう聞いても別にハラも立たない。「やっぱりそうか」ぐらいにしか思わない。しかし、問題なのは、教育関係者や警察など、血液型による性格診断を信じて「利用している」ことだ。そう言えば、テレビでもよくやっている。こういうのはエセ科学として、有害な情報の流布にはならないのだろうか。
ロールシャッハのブラインドテストの結果が見ものだ。被験者を伏せて、結果を診断させるのだが、これが全くのハズレ。その被験者の本当の姿とは全く合致しない、トンでもない診断が出てきてしまうのだから、お笑いだ。この一件以来、専門家の間では、同種のテストは行われなくなったそうだ。
昔、フロイトの「夢判断」を読んだが、長いものは何でも「男性のシンボル」で、丸いものは女性のそれ、という具合に、夢で見たものが何でも性的イメージとされてしまう。ここから一歩も進歩していないのではないか。
最後のクレペリン検査は、今でも自治体や教員の採用試験に使われるそうだ。この検査は、診断の仕方を知っていれば、簡単に正常値を出せるし、逆に、実験を繰り返していくと、正常者が1割ぐらいにまで減ってしまうそうだ。こんな検査をまじめにやっていて良いのか?
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