著 者:村上春樹
出版社:新潮社
出版日:2005年11月6日発行 2005年9月30日2刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
「新潮」に2005年3月号から6月号までに掲載された短編4編と、書き下ろし1編の計5編が収められた短編集。
「奇譚集」だから、ありそうにもないけれど、もしかしたら….。という話が5つ。考えてみれば、村上春樹の小説は、作品によって度合いに違いはあるが、全て奇譚と言える。(ちなみに、本の帯に【奇譚】<名詞>不思議な、あやしい、ありそうもない話 という説明が書いてある)
不思議の度合いが、1編目より2編目、2編目より3編目と強くなっている。1つ目はありえないような偶然が重なる話、2つ目は幽霊話、3つ目は品川で姿を消した男が仙台に現れる、4つ目は夜中に石が勝手に動く、そして5つ目に至ってはしゃべる猿(羊ではなく)の登場。月刊誌への掲載だから、読者はこの順に目にすることになる。偶然ではないと思う。徐々に村上ワールドへ引き込む作戦だろう。そして、この短編集自体も、そうした意図を持ったものに違いない。
書き下ろしの「品川猿」が一番面白い。しかし、長編のような細部の書き込みが足りないような気がした。猿が名札を盗むのだけど、どうやって在りかを見つけたのかを聞かれて「ひらめき」で済ませてしまっている。
しかし、登場する人は、ゲイであったり、息子をサメに食われた母親であったり、親に愛されなかったりと、不完全さを持つ人々が多い。そういう人々の物語をサラッと書く手並みはさすがだ。
人気ブログランキング投票「あなたの一番好きな村上春樹の長編小説は? 」
(結果だけみることも、自分の好きな作品を投票することもできます。)
にほんブログ村「村上春樹あれこれ」ブログコミュニティへ
(村上春樹さんについてのブログ記事が集まっています。)
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)