反社会学講座

著 者:パオロ・マッツァリーノ
出版社:イースト・プレス
出版日:2004年6月23日第1刷 2004年10月5日第6刷
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の素性は不明。恐らくはどこかの大学の社会学の先生なのだろう。何しろ、膨大な資料を読み込んでいる。これだけの資料・文献にアクセスでき、情報を整理して結論を導き出すのは、誰にでもできることではない。社会学の専門家に違いない。
 このような作業を経て、著者が全20回の講座で明らかにしたことは全て、世の中で社会学、統計によって語られている言説への反証だ。

 世の中で心配されている少年犯罪の増加も、フリーター・ニート問題も、少子化もすべて社会学によるトリックで、スーペーさん(超悲観主義者:スーパーペシミストと著者は呼んでいる)と、問題がないと困る官僚などによるでっち上げだと言い切る。
 社会学の手は、世の中の出来事に対して、「ある仮説を立てる→調査によって証明する」という方法であり、実験による証明は難しい。そうである以上、仮説を証明するための都合のよい調査結果だけを取り上げてしまう過ちから無縁ではいられない。意図的に行えば、どんなでっち上げの結論も導き出せる。
 このような手法で、いろいろな言説の裏付けがなされていると、著者は主張している。しかし、著者の反証の方法も、同じ手法から一歩も出ていないのだが、これも仕方ないことか?

 そんな中で、冒頭の少年犯罪の増加についての記述は秀逸だと思う。平成元年からの少年凶悪犯罪のグラフを見ると2倍の増加、ということになる。しかし、その左、つまり過去をグラフに付け足すと、昭和35年ごろに今の3倍以上を記録していて、以降全般的には下降傾向にありることが分かる。少年犯罪の増加を主張する人々やメディアは、グラフの右端部分を拡大することで、未曽有の事態が起きていることを演出したのだ。

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