著 者:塩野七生
出版社:新潮社
出版日:2006年12月15日発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
ローマの歴史を綴る全15巻の完結。
本巻は、ローマが東西に分裂して別の皇帝が治めるようになる395年から、476年に西ローマ帝国が滅び、その後東ローマ帝国による領土の回復のための100年間を描いて終わる。
この後は、1453年のオスマントルコによるコンスタンティノープルの陥落まで、約1000年間も東ローマ帝国ないしビサンティン帝国は続く。しかし、塩野氏はこれを含めない形で「ローマ人の物語」とした。
後世の歴史家の評として、帝国滅亡の70年前に亡くなったスティリコという蛮族出身の将軍を「最後のローマ人」としたのは、塩野氏の考えでもあるのだろう。ローマ人とは、ローマ市民である以上に、その姿勢(スタイル)までローマ的であるべきだ、と言うのである。
確かに東ローマ帝国は、あまりにオリエント的であるし、カトリックの考えのためか排外的でもある。また、ローマという都市なしでのローマ帝国はあり得ない、とも言う。確かにそうであろう。地中海を内海とする歴史に類を見ない帝国であり、ローマはそのカプト・ムンディ(世界の首都)であったのだから。
それにしても、本巻の主役たちが全員軍人であるのはどうしたことだろう。皇帝は、宮中深くでろくなことをしない存在としてしか描かれていない。
ローマは王政、共和政、帝政を通して、有能なリーダーが支えた帝国ではなかったかと思う。最終巻の主役が全員軍人になってしまったということは、帝国末期には、皇帝がリーダーでなくなってしまっていたことを表しているのだろう。
西ローマ帝国は、壮絶な戦いの末に滅んだのではなく、蛮族出身の将軍に皇帝が退位させられ、その後の皇帝が選ばれなかった、というだけなのだ。滅亡でなく消滅、気が付いたら無くなっていた。歴史に類を見ない大帝国の最後にしては、あまりに情けない。
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