著 者:三浦しをん
出版社:新潮社
出版日:2006年9月20日
評 価:☆☆☆☆(説明)
オンボロアパート「竹青荘」に住む10人の大学生が箱根駅伝に挑む、青春ストーリー。箱根駅伝は10人で走る、その総力で順位が決まる。もちろん誰でも出られるわけではなく、選ばれた20校(正確には20チーム/19校らしい)だけに与えられる栄誉なのだ、出場そのものが。
加えて、昨年の成績によるシードなどもあるから、初出場を果たそうと思えば、予選会で上位9位に入らなければならない。そこに、10人ちょうどで挑む、しかも陸上経験者は3人、残りのうち1人はマンガおたくで運動経験はゼロ。
そんなムリめの展開なのに、話にのめり込まずにいられない。著者の筆力によるものだろう。ちなみに、2006年の直木賞作家だ。
主人公の走(かける)は、高校時代は陸上部のエースだった。しかし、走ることへの純粋さゆえに暴力事件を起こしてしまった過去がある。コーチの灰ニ(ハイジ)も、才能のあるランナーであったが、ヒザの故障のため挫折した経験がある。こうした登場人物の背景をドラマチックに絡めながら、物語は箱根駅伝当日へと集約していく。
ここで私が指摘するまでもなく、著者は承知の上で本書を書かれたのだと思うが、駅伝というスポーツは、登場人物を丁寧に描ける素材であることに気付かされた。
駅伝は何人かで行う団体競技であるが、ランナーはただ一人孤独に走る。誰の助けも得られない20キロ程度を走るその時間に、ランナー自身も何かを考えるだろうし、小説家はじっくりと1人1人のドラマを描くことができる。走と灰ニ以外にもあと8人のドラマを凝縮することができるわけだ。
500ページの本の200ページは駅伝当日。何ともオイシイ舞台ではないか。
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この本は僕も読みました。
大学で現在長距離をやっているので、かなり無理めな設定と感じていたが、話にのめり込んだ。
また読んでいて、よく取材しているなと感じる描写などがたくさんありました。
陸上競技に関する小説で「800」という本があります。
ブログで紹介しているので見てみてください。
またお邪魔します。
本屋に5時間さん、コメントありがとうございました。
素人集団が箱根駅伝に挑戦、とは確かに無理めな設定ですね。
陸上競技の経験が無い私はそのあたりをサラッと流して、
彼らの頑張りを楽しむことができましたが、長距離の競技の
経験がある人は、この設定がひっかかって楽しめないのでは
ないかと思っていました。
「よく取材をしているな」と感じられたり、経験のある方は、
それなりに楽しみ方があるのですね。