著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:野口絵美
出版社:徳間書店
出版日:2006年12月31日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
なんと、この作品はジョーンズの1970年のデビューを4年遡る1966年に書かれた作品。著者が30才のころ、3人の子育てに追われながら自分の楽しみのために書いた、6つの作品の6番目だという。つまりは素人作品ということ。それでこの面白さ、ワクワク感は驚きだ。
舞台は100年以上前のビクトリア時代の英国。主人公は、16才のセシリアと12才のアレックスの姉弟。2人は海辺の丘に住んでいて、そこから浅瀬でつながる島には、幽霊が出るとか、行った人は帰って来ないとかいう噂がある、廃墟となった城がある。
ある夜、その島から来たという中世の騎士のような出で立ちの男が、助けを求めて2人の家を訪れたことから、2人の冒険が始まる。島へ渡る秘密の道、隠された王国、そこで起きる陰謀。この作品がもっと早くに世に出ていたら、著者の代表作になったのではないかと思わせる完成度の高さだ。
完成度の高さ、という点には少し補足が必要かと思う。本書は比較的短い作品だということもあって、ストーリーに複雑さが少ない。後の作品のような、入り組んだ展開や隠された意味のような仕掛けが少ない。
複雑な伏線はジョーンズの持ち味とも言えるが、読み手の力量が足りないと、読み終わっても何だかスッキリしない、もう1回遡って読んで何とかやっと分かる、という事態に時々陥る。本書は、こういった心配がないので、これを私は敢えて「完成度が高い」とした。もちろん裏を返せば「平板でつまらない」とする向きもあるだろう。
しかし「平板でつまらない」と思うかどうかは、読んでみないと分からない。(私はつまらないとは思わなかった。)だからジョーンズファンの人には、これを読まないという選択はないように思う。
こういった現在の作品との比較のことは、「訳者あとがき」にも同様のことが書いてある。ついでに訳者の言葉を借りれば「ジョーンズ作品を読みなれていない読者にもおすすめ」である。ジョーンズが初めての人は「ハウル」や「クレストマンシー」シリーズの前に、本書を読んでみてはどうか?と思う。
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海駆ける騎士の伝説
書評リンク – 海駆ける騎士の伝説
こんにちは。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズといえばハウルとアブダラ以外には「星空から来た犬」しか読んでいないのですが、上記の3冊ともすごく好きだったので、ぜひまた何か読みたいと思っていました。
「海駆ける騎士の伝説」
次は、これにします。タイトルからしてわくわくしますね。
またまたお邪魔させていただいちゃいました
(先日はぶしつけにTBもさせていただいちゃいました)
が、ちらりと見えた「ダウン・ツ・ヘブン」の記事は読まずに我慢して・・
次は、読後にまたお邪魔させていただけたら などと思っています。
さーにんさん、またまたコメントありがとうございました。
ハウルやアブダラが面白かったのなら、ちょっと短めですが
この本も気に入ってもらえるでしょう。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの作品は、面白いのが
たくさん日本で出版されているし、まだ訳されていない作品も
たくさんあって、これから出るでしょうから、好きになれば、
しばらくは、読む本に困りませんよ。