著 者:森 博嗣
出版社:中央公論新社
出版日:2007年6月25日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
「スカイ・クロラ」 シリーズ5部作も本書にてひとまず完結。時系列に沿って、1作目の「スカイ・クロラ」の直前までの出来事がこれで明らかになった。しかし、明らかにならなかったこともある。著者は、最後の作品で最大の謎を提示して物語を閉じてしまった。クサナギは、クリタは、カンナミは、何者なのか?
今回の主人公が誰であるのか?物語の中では明確になっていない。そもそも1人称で語られるこのシリーズでは、誰かが主人公を名前で呼ぶようなことがないと、主人公が誰であるのかはっきり分からない。また、女性であるクサナギが「僕」と自分を呼ぶので、2作目の「ナ・バ・テア」では、途中までは主人公は男だと読者の多くは騙されたはずだ。
そういった仕掛けの延長線上にあるのだから、主人公が分からないことや、ある場面を根拠に誰かに仮定すると、別の場面でその仮定が破たんしてしまうことは、いわゆる「つじつまが合わない」というような、著者の未熟さの結果ではないことは明らかだ。
著者は、本の中に謎を仕掛けることで、読者と戯れているのではないかと思う。このシリーズで登場するパイロットたちは、命のやり取りである空中戦を「ダンス」と称して、真剣ではあるけれど楽しんでもいる。同じように著者は物語の謎を介して読者と「ダンス」を楽しもうとしているんじゃないか、と思う。命のやり取りはないけれど。
だとすれば、著者の目論見は見事に的中したと言える。本書の感想を書いたネットの記事をいくつか見れば、それは一目瞭然だ。主人公が誰だか分らないような、言わばいい加減な本を読んだのに、そのことに憤慨したり、非難したりする意見はほとんど見当たらない。
その代りに「もう一度1冊目から読み直します!」という内容か、「私の考えでは、主人公は...」という謎解きに挑戦したものばかりが目につく。まるで、ちょっと難しいなぞなぞを問われた子どもたちのようだ。本書の謎は読者を魅了したらしい。
ストーリーにも触れておく。今回は全編が逃走劇。病院を抜け出した主人公は、誰に追われて何処に行こうとしているのかも分からないまま、逃走を続ける。中盤に追手の影が見え隠れするあたりからは、憎らしいことに結構ドキドキする。サスペンス小説としても上々だ。
まぁ、ストーリーが上々であることを除いても、ここまでのシリーズを読んで謎が残った読者は、本書を読まないわけにはいかないだろう。そして更なる謎を抱えて「なぞなぞサークル」に仲間入りしよう。
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クレィドゥ・ザ・スカイ
書評リンク – クレィドゥ・ザ・スカイ
かばとととひひにコメントありがとー。
私は推理小説がスキなのだけど、不思議とこのシリーズは、”謎を追いかけたいけど、追いかけなくても満足”
みたいな感じになってます。
どうしてでしょうか?
私的にはそれがナゾです。(^_^;)
鯡さん、コメントありがとうございました。
分からないことが楽しい、という感想を他の方の
ブログで見ましたけれど、まさにそんな感じですね。
森博嗣『クレィドゥ・ザ・スカイ』中公文庫
クレィドゥ・ザ・スカイ『スカイ・クロラ』シリーズ5冊目。起承転結というような構成に則っている訳ではないだろうが「転」とも「展」とも言えそうな、物語を大きく動かす1巻になっている。夢と現実のあわいが、ますますおぼろげになる。映画の関わりから見ると、1巻、……
こんにちは。昨夜読み終わりました。
私も「なぞなぞサークル」に入れてください(笑)
自分だけアタマが悪くて主人公が誰なのか ちゃんと掴みきれていないのかと思っちゃってました。
こうなったら次作「スカイ・クロラ」が ますます早く読みたいです。謎は、明らかになるんでしょうか。。。
YO-SHIさん、はじめまして。
コメント、ありがとうございました。
スカイ・クロラを最初に読んだ時は、サッパリわからず。
でも、森さんの陰謀(?)にハマって、クレィドゥ・ザ・スカイ
までやっとたどり着きました。
最後に全ての謎が解明されるミステリーに慣れてしまって、
語り過ぎずに、謎のまま残すというもの新鮮に感じられました。
エクリプスを読んでも、読者の想像力を試すんだろうなぁ。
さーにんさん、コメントありがとうございます。
「なぞなぞサークル」へようこそ(笑)
「スカイ・クロラ」読んだら、何かわかったかぜひ教えてください。
読む順番が違えば、見えてくるものも違うかもしれません。
著者が「スカイ・クロラ」を一番最初に出したのには、何か理由が
あるように思うんです。
最後に読むと明らかでも、最初に読むと気がつかない伏線とか...
(考えすぎかも)
—-
マツボーさん、コメントありがとうございます。
森さんの陰謀にはまった人が、ネットには多数います。
でも、騙されてうれしい、分からなくて楽しい、って
感想が多いです。
スカイ・イクリプスで謎がスッキリってことは...
ないんでしょうね。
こんにちは~。
YO-SHIさんのコメント最高ですね!
そう、私も主人公がわからない・・とか謎が謎のまま・・とかってブログの記事を読むたびに不安になって、読む気力も失ってました。
果たして私にたどりつけるのだろうか・・って。
でもYO-SHIさんの記事読んで、私も「なぞなぞサークル」に入りたい!著者とダンスしたい!ヽ(´▽`)/って楽しくなって、昨日残り2冊を購入しましたよ!
「フラッタ~」は昨日読んで、今日はこの「クレイドウ~」ですっ!
私のブログに書き込みをして頂きありがとうございました!
遅くなりましたが、返信しております。
私もそんなに沢山ではありませんが本を読むのはスキです。
なので、これからもこちらのブログを参考にさせて頂こうと思いますので宜しくお願いします!!!
るるる☆さん、コメントありがとうございます。
褒めていただいで、うれしいです。「最高」なんて言葉、いただける
ことは滅多にないので。
るるる☆さんも読まれた「水柿助教授」を読んで、この人はきっと、
茶目っ気のある人なんだろうなぁ、って思ってました。
それで、本書の「分からなさ」は、著者のイタズラなんじゃないかと
思った次第です。もちろん、すべて私の想像、妄想ですが。
そろそろ、読み終わられたころでしょうか?
—-
こめぴかさん、コメントありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いします。
こめぴかさんのブログの返信も読ませていただきましたよ。
怖いのは得意ではないのですが「少し変わった子あります」
も読んでみます。
こんばんわ。読み終わったのでまた来ました。
謎を介して著者とダンスしてきましたよ~。
面白かったです。こんな小説は初めてです。
謎が残ってるのに満足!気分は爽快!ですよね。
TBさせてくださいね。
クレイドウ・ザ・スカイ
ようやくたどりつきましたシリーズ最終刊「クレイドウ・ザ・スカイ」。
いろんなブログ記事で「主人公が誰かわからない」とか「謎は謎のまま…
るるる☆さん、コメントありがとうございます。
「なぞなぞサークル」へようこそ。ダンスも楽しかったみたいですね(笑)
るるる☆さんのブログを拝見すると、主人公に確信があるようですね。
私は、誰だかはっきりと分からないままです。
こんにちは。記事をアップしましたので、TBいただきますねm(_ _)m
時系列順にここまで読んだ私が思うこと。
それは、「スカイ・クロラ」から読み始めればよかったかも。
ってことです(^ ^;)ゞ
特に理由は思い当たらないのですけど、なんだかその方がもっと楽しめたかも?って気がして。
「スカイ・クロラ」読了後に この感想が間違いだったと分かるといいんですが♪
うまくTBが送れていないみたいです。ちょっと原因がわかりません、ごめんなさい。
YO-SHIさん、よろしかったら私の記事の方へのTBはお気兼ねなくどうぞ。
さーにんさん、コメントありがとうございます。
「スカイ・クロラ」を最初に読むか最後に読むか、という
ことですが、最後に読む楽しみ方もアリだと思いますよ。
私は最初に読みましたが、「これはもう1度、最後に
「スカイ・クロラ」を読まなきゃダメかな?」と思って
ます。(その前に「スカイ・イクリプス」を読まねば。)
ごめんなさい。TBができない原因は、私もわからなくて。
特に何の制限もなく、すべてウェルカムなんです。
いえいえ。またそのうち試させていただきますね。
それより、こちらへのTBありがとうございました。
実はおとつい、ネットで「ナ・バ・デア」を購入しようと申し込んだら
「売り切れ」といわれてしましました・・
クサナギとティーチャーのいい話で好きなのに・・・・
ぷぅちゃん☆さん、コメントありがとうございます。
今、ちょっとネット書店をいくつか見ましたが、
文庫はどこも「在庫なし」ですね。
出版社で増刷の計画があればいいのですが..
私もこの話は好きです。シリーズの中ではドラマが
あるし、終わり方も希望が持てるので。