著 者:有川浩
出版社:角川書店
出版日:2008年6月30日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
軍事オタク、自衛隊オタクの著者の甘~い短編集。収録されている6編全部、自衛官の恋愛を描いている。こんな本は日本中、いや世界中で著者にしか書けない。本書の前に出た「阪急電車」や「別冊図書館戦争1」で、私の耐えうる限界に達していた甘さ加減は、今回は少し控え目だったかも(もちろん「著者としては」だが)。甘いは甘いんだけれど「イイ話」が多くて楽しめた、少しウルウルした。
ウルウルには訳があるように思う。自衛官は、私たちとは違った価値観や規律の下で生活している。例えば、階級による上下関係が強く上官の命令は絶対だ。一番の違いは、一朝有事があれば任務遂行のために命を賭すことを義務付けられていることだ。このことが、ストーリーに作用しドラマ性を盛り上げている。
本書で紹介されるところによると、自衛官の結婚式での上官の祝辞の定番に「喧嘩を翌日に持ち越さず、朝は必ず笑顔で..」というのがあるそうだ。この言葉が意味することは、本来は祝宴では口にできないことだ。それを敢えて言うところが更に深刻なのだ。
それで、自衛官の平均年齢は30台前半だというから、普通に考えれば「恋愛したい」「そろそろ結婚も」という年代だ。彼ら彼女らが危険を背負いながら、一方では普通の若者としての生活や感情も持っている。これはもしかしたら、自衛隊にはギュッと凝縮された恋愛のドラマの下地があるのでは..。
と、著者が考えたかどうかは定かではない(おそらく違う)が、著者は本書の執筆前に、自衛官たちに取材をしている。収録の短編の多くには、取材に基づくモデルがいる。だから、著者がかなり甘い味付けを施したとしても、本書は自衛官の姿の一端を見せてくれていると言える。
自衛官の姿の別の一端と言う意味で付け加える。彼ら彼女らは、このように普通の若者たちなのだが、国民の安全と国防のために訓練された精神を持っている。中東へ赴く青年や、領空侵犯を警戒する任務につく青年のエピソードがあるが、そこには強い使命感が伺える。
これも本書によると、軍事オタクの多くは戦闘機や戦車などの「装備」にこそ興味があり、それに詳しいそうだ。しかし著者は、「装備」以上にそこにいる「人」に興味を持ち、取材をすることで詳しくなったのだろう。やはり、こんな本は世界中で著者にしか書けない。
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はじめまして。私も自己啓発書を中心とした、書評ブログを
運営しております。このブログは私が読まない分野の本が
中心で、お陰で世界観を広げることができ非常に感謝して
おります。できましたら相互リンクをお願い致します。
それでは。
ブログへのコメント、ありがとうございます☆
いろいろ本読まれてるんですね。
書評もさすが本格的!
有川浩氏の本は、まだまだこれからなので、いろいろ読み進めていきたいです。
ゆきさん、コメントありがとうございます。
書評ブログ以外にもいろいろなブログを運営されているのですね。
こちらこそ、参考にさせていただきます。
右のリンクリストに、ゆきさんのブログを追加しました。
—-
りよさん、コメントありがとうございます。
いろいろな本、ということで言えば、手当たり次第の乱読で、
自分でもあきれることがあります。
有川さんの本は、私も「図書館戦争」から読み始めました。
今ではすっかりハマッてしまってます。
narniaです。
ハンドル通りナルニア国ものがたりシリーズのファンを何十年もやってます。
ファンタジー系の本しか読まないわけではないですし、
ここの書評・感想はシリーズも一冊ずつ丁寧に取り上げてるので、
次ぎに読む本を選ぶ際に参考になります。
さて有川女史ですが、デビュー作から自衛隊に対する
特別な思い入れが感じられますよね。
隊員たちの思考経路や行動パターン、心構えなどは
私のようなパンピーとは大きく異なることがよくわかり、
異なる日常生活を垣間見ることができて興味深いです。
しかも災害出動ではなく、あくまでも国防という観点で
語っている点も見逃せません。
また、これだけベタベタなラブコメというのも
非常に珍しいのでは?
健全な「おのこ」としては恥ずかしさで身がよじれますが、
ときどき読むにはサイコーです。
朝食
「えっ、そんなに朝から食べるの!?」
「えっ、朝なのにそれしか食べないの!?」
ラブコメ今昔
有川 浩
この本の存在を記録するために無理無理引用してみましたw
相変わらずベタベタなラブコメ一辺倒です。
しかもまたまた自衛官ばかり。
男の私から見ると、有川作品の女性キャラは男性から見て「こういう彼女が欲しい」というタイプではないかと思います。
逆に男性キャラは女性読者にとって「こんな彼氏が欲しい」というよりも「自分がこういうふうに振舞うことができたらいいな」とい…
narniaさん、コメントありがとうございました。
ナルニア国物語のシリーズのファンを何十年も、というのは
素晴らしいですね。
年を経て読むと、違った感想や気づきがあるんでしょうね。
有川さんの本ですが、これだけベタベタなラブコメは確かに
珍しいですね。
大人が読む分には大したことないのですが、気が付くと
小学生の娘が読んでいて、あせったことがあります。
とても読みたいのですがやはりハードブックは高いですね。
有川作品は海に底、塩の街、空の中、図書館シリーズ、阪急電車と読んできたのでとても気になっています。
図書館で借りようと思っても予約が100件あるし、阪急電車、図書館シリーズのように立ち読みもできないのでつらいです。(部活帰りの友達に見られたら・・・という恐怖感のせいで落ち着いて読めません。できればもう少しオブラートに包んだ題にしてほしかったような・・・)
シャーパーさん、コメントありがとうございます。
部活帰りってことは、シャーパーさんは学生さんなんですね。
「ラブコメ…」って本を読んでるところを友達に見られたく
ないですね。それも、ちょっとニヤけてるところなんか特に。
学生さんにとっては、確かに1470円はちょっと高いというか、
躊躇しますよね。
よく売れている本だけに、ブックオフなどの新古書店にも
置いてあるそうなので、値段が折り合えば、そちらで買う
のもいいかもしれません。(読みおわったら売ればいいし)
ラブコメ今昔
書評リンク – ラブコメ今昔
有川さんにしては抑えてるけど、まだ甘いですね。
このベタ甘が慣れると抜け出せなくなるんでしょうね。
でも読んでる姿は人に見せられない^^
『ラブコメ今昔』有川 浩
今回もこっぱずかしいと聞いて覚悟してたのがよかったのか、単に俺が慣れただけなのか、『ラブコメ今昔』では身悶えするほどの甘さは感じませんでした。『クジラの彼』よりリアルというか、そこら辺にいそうな現実的なカポーの話が多かったですね。
…
鯨さん、コメントありがとうございました。
おっしゃる通り、まだまだ甘いです。
鯨さんのブログのコメントにあった通り、
「ココアが砂糖タップリのコーヒーになった程度」
ですね。
ラブコメ今昔 / 有川浩
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あぁぁぁぁ〜、もうっ!ご馳走さまっ!
ラブコメ!しかも登場人物は自衛隊員。この組み合わせが有川浩だね。でも、図書館戦争(別冊)…….