お客をつかむウェブ心理学

著 者:川島康平
出版社:同文館出版
出版日:2008年7月25日初版
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 本書は、「ウェブ商人」を名乗る著者が、モノを売るウェブサイトの工夫の数々を紹介したものだ。「ハロー効果」「ザイオンス効果」などの、50個の心理学の知見を巧みに活用して、お客の心理を読んで「注文」ボタンを押させるテクニックが満載だ。
 50個の心理学用語がそれぞれ4ページの章建てになっていて、全部の章で、事例を交えた用語の解説と、それをウェブに落とし込む方法の例示、という同じ構成になっている。何ともまじめで親切な本だ。読みやすさの点からも評価できる。

 例えば「バンドワゴン効果」。これは、行列ができているお店に人気が集まるように、多くの人に支持されている(と感じる)ものに惹かれる現象のこと。バンドワゴンとは、パレードの先頭を行く楽隊車のことだ。
 これをウェブに落とし込むと、セミナーの告知広告なら、講師のアップの写真だけでなく、過去のセミナーの参加者の後頭部がたくさん写っている写真を載せる、となる。「こんなにたくさん人が来ているのなら、いいセミナーなんだろう」と、思ってもらえることを狙っているわけだ。
 別に取り立てて目新しいことはないように思うかもしれない。しかし、レストランのウェブサイトなどを見たらどうだろう?きれいな(無人の)店内の写真が載ってはいないだろうか?「静かで落ち着いた雰囲気」が売りならそれも良いが、そうでなければ賑わいのある写真が1枚あってもいいように思う。
 ちなみにレストランでは、客の入りの少ない時間帯は、窓際に案内することが多い。客が誰もいないと入りにくいから、というのが理由らしい。「バンドワゴン効果」という用語を知らなくても、レストランは本業ではそういったことを知っているのだ。

 敢えていくつか気になったことを言わせてもらう。1つは些細なことだが「サブリミナル効果」の紹介が不十分なこと。「アメリカの映画館で実際にあった有名な話」として、(確かに有名なコーラとポップコーンの)エピソードが紹介されている。しかしこの実験は後に、実験者自身がデータが不十分だったと告白しているので、実際にあった、と言い切るのはどうかと思う。まぁ、その後の解説には影響しないのだけれど。
 もう1つは、「ウソ」に対する許容度が、私とは少し違うと感じること。コミュニティサイトへお客のフリをして書き込むとか、玄米の紹介で(事実のあるなしは関係なく)「健康診断で医者に良いと言われた」と書いた方が効果的だとか。私はこれらはウソ、不誠実だと感じる。
 著者がいる「売れてなんぼ」の世界では許容範囲なのだろう。こんなことを言う私が甘チャンなのかもしれない。もう一つ言えば、この本の基ネタはセミナーらしい。口頭で言われる分には、私も抵抗なかったかもしれない。
 しかし、50個の用語が全部とは言わないが、相当数は役に立つし、ウェブサイト以外でも応用可能だ。だから基本的にはオススメの本だ。おいしい魚を食べていたら、小骨がノドに刺さったようなモノ。魚のおいしさが変わるわけではない。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

6つのコメントが “お客をつかむウェブ心理学”にありました

  1. ぷぅちゃん☆

    ネットショップを手伝っている私としては、この本はぜひとも読みたいですね。
    ありがとうございます、探してみます^^

    追記。ナ・バ・デア、やっとゲッツしました^^
    ティーチャー 好きなんです(笑

  2. ビジネス書を読んで、成功しよう。

    YO-SHI様、はじめまして。ビジネス太郎と申します。
    「おいしい魚を食べていたら、小骨がノドに刺さったようなモノ。魚のおいしさが変わるわけではない。」表現が見事ですね。
    顔を合わせないウェブの世界にも心理学が働くって、なんか面白いです。
    また訪問させていただきます。

  3. YO-SHI

    ぷぅちゃん☆さんコメントありがとうございました。

    ネットショップを手伝ってらっしゃるんですね。
    でしたら、この本は参考になると思います。
    まぁ「ちょっとしたアイデアが50個も書いてあるので、そのうちの
    何個かは役に立つでしょう」というぐらいの期待で読んでもらうのが
    ちょうどいいと思いますが。

    「ナ・バ・テア」ゲット、おめでとうございます。
    ティーチャ、カッコいいですよ。カッコいいのは大人ですよ、やっぱり。

    —-

    ビジネス書を読んで、成功しよう。 さん、コメントありがとうございます。

    パソコンに向かう時はひとり、ということが多いと思いますが、
    集団心理が働くのですから面白いですよね。

    ブログも拝見しました。ビジネス書をあのペースで読まれるとはスゴイ
    ですね。私は、1冊読むとやるべきことがいっぱいあるように感じて
    かえってヘコむことがあります。
    我ながら後ろ向きです。そんなんじゃ、2000%成功しないですね。
     

  4. YO-SHI

    転職コンサルタントさん、コメントありがとうございます。

    真面目なつくりの良い本だと思います。
    興味を持っていただいたようなので、是非読んでみてください。
    感想などを聞かせていただけるとうれしいです。
     

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です