異次元の刻印(上)(下)

著 者:グラハム・ハンコック  訳:川瀬勝
出版社:バジリコ
出版日:2008年9月21日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 ハンコック氏の著書は、人類の歴史についての主流とか定説になっている学説に、真っ向から反対するものばかりだ。それ故、著者の本は「トンデモ本」との評価を免れない。それでも、私が何冊もお付き合いしているのは、著者の主張に一片の真実がある可能性を感じるからだ。また、その主張を裏付けるための取材に見る、著者のバイタリティが敬服に値するからだ。
 その取材のあり方について、「都合の良いところだけのつまみ喰い」という批判があることはもちろん承知している。著者は記者であって、そのテーマを専門とする研究者ではないので、専門家からはイロイロと言いたいこともあるだろう。
 私自身も、これまでに展開された数多くの主張の中には、飛躍しすぎた論理展開など、ついて行けないこともあった。しかし、それでも著者の主張が全くのデタラメである、と論証するのは誰であっても難しい、とも私は思うのだ。

 さて、本書での著者の主張はおおむね次の通り。
 「先史時代の洞窟壁画に描かれた絵、アフリカやアマゾンのシャーマンが得る啓示、ヨーロッパ各地に残る妖精伝説、宗教家が受けたとされる天からの啓示、UFOに拉致されたと主張する人々が遭遇した場面、薬物の摂取によって見る幻覚、これらには多くの共通点がある。そしてこれらは、太古の昔に生物のDNAに組み込まれた暗号であるか、または、通常は脳が感知できない周波数で振動している次元に実在する現実である可能性を否定できない」。
 「先史時代、シャーマン、妖精、天からの啓示、UFO、薬物」これらのワードは、それだけで何となく胡散臭い。「トンデモ」な文脈で語られることが多く、科学者と呼ばれる人々は、道を誤りたくなければ公には口にしない類のものだろう。しかし「胡散臭い」という印象の他には、これらを完全に否定する要因がないのも事実。逆に、こういったワードについて、様々に語られている証言を一旦肯定した上で考察を進めたのが、著者の主張だ。

 同列に語ることに違和感や嫌悪感を覚える人がいるかもしれないが、著者の主張の一部は、量子物理学、宇宙物理学の分野と接近している。超ヒモ理論などで言われる多次元空間や並行世界、宇宙の大部分を占める「暗黒物質」。これらは多くの人が感覚的に理解できないし、目にすることもできない。なのに「トンデモ」とは言われない。
 先ごろノーベル賞を受賞した研究「対称性の破れ」だって、宇宙誕生のその瞬間の研究だけれど、これまでの知識の積み重ねがなければ、ビッグバンなんて考えは、完全に「トンデモ」視されているだろう。

 「胡散臭い」という心のカセを外すことさえできれば、説得力がある論理の展開だ。もし、読者がそのようなことができるのならオススメする。面白い読み物となるだろう。

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3つのコメントが “異次元の刻印(上)(下)”にありました

  1. けんしろう

    はじめまして。

    けんしろうと申します。

    読書が好きなので、ブログを読ませていただきました。

    グラハム・ハンコックさんの本は、確かにいいとこどりの内容のように感じますが、
    そのようなものと考えると、とても面白い読み物だと思います。

    また参考にさせてください。

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  2. YO-SHI

    けんしろうさん、コメントありがとうございます。

    そう、ウソかホントか?を突き詰めるのではなく、
    もしかしたらそうかも?ぐらいの読み方がいいのでは
    ないかと思います。

    今後ともよろしくお願いします。
     

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