著 者:上杉隆
出版社:新潮社
出版日:2007年8月27日発行 9月30日7刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
副題は「安倍政権迷走の1年」。前の前の政権の、発足から終焉間際までの約1年間の顛末の記録だ。新聞やテレビなどのメディアを通しては見ることのできない、政権内部での出来事がつづられている。ニュースで見たあの場面のウラは、こういうことだったのか!という話題が満載で面白かった。
そもそも私が1年以上前に出たこの本に興味を持ったのは、今の麻生政権に大きな疑問を持ち、「いったい何でこんなことになるんだ」と思い、政権の内部事情を書いたこの本のことを思い出したからだ。
各社の調査で20%そこそこの支持率しかない現政権だが、大きな失策というよりは、何もしない(できない)のに自壊しているように思える。そう言えば、安倍政権も閣僚の不祥事が相次ぎ、守ることも切ることもできずに自壊した。最近の短命政権に共通するのは、無為無策による自滅だ。
本書に話を戻すと、議員秘書からジャーナリストに転身した著者が、その経歴や人脈をフル活用して取材したと思われる出来事が、独自の解釈を加えて紹介されている。すべて実名で、エラい先生方のあれこれの振る舞いが書かれているので、永田町からの風当たりは強かったろうと思う。もちろん、先生方にも言い分があるはずだし。
先生方の言い分を大幅に考慮に入れて、著者が加えた解釈も含めて、控え目に見て本書の半分が真実だとしよう。それでも感じるのは考えの浅さだ。自分なりに考えて一手を指すのだが、考えが足りずすぐに駒を取られてしまう、初級者の将棋のようだ。「これがいい」と思って口にするのだが、支持を得られず実現もしない、現政権の政策も同じ理由によって迷走しているのだと考えれば説明がつく。
つまりは人材がいないのだ。幸いなことに登場する官邸スタッフや政治家に私利私欲で動く人はいない。功名にはやることはあるが、行おうとする政策は良かれと思ってやっていることだ。でも、政治は結果で評価するしかない。ねじれ国会や金融危機という逆風もあるだろうが、迷走する政権が3代も続いているのは、永田町と霞が関にもう人材がいないことを表しているのではないだろうか?
冒頭に「面白かった」と書いたが、それは読み物としてのこと。その後には言いようのない寂しさを感じた。
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本当に、内部事情でどんどん崩れていくようですね。
自分もこういう話題にも少しは目を向けなければ。。。
政治の世界は負のスパイラルにはまり込んでる感じに見えます。
政治家は悪い印象ばかりで、あれでは「日本のためにがんばろう」
というモチベーションは絶対生まれない気がする…
どっちが先であれ、この先は崩壊しか目に浮かびませんね。。
少しでもいいから何か現役政治家のいい話を聞きたいなあと思うこの頃です。
安倍さんも色々功績はあったはずなのに、そういう話題を目にしたのはすっかり終った後でした…。
liquidfishさん、コメントありがとうございます。
liquidfishさんは、確か学生さんでしたね。
もうすぐ社会人になられるのでしょうか?
この前、うちの奥さんと話したんですよ。自分たちの世代は
いいから、若い人たちにお金を回してやって欲しいって。
自分たちだってラクじゃない。まだ子育て中で、これから
お金だってドンドンかかるし。
でも、私達が学校を卒業するころは、何となくみんな就職
できました。もちろん、その後の人生は人それぞれですが。
それが今は、その時の景気によっては、たくさんの人が
社会に出るスタートがうまくいかない、その後もなかなか
挽回できない。元気だせって言ったってムリですよね。
麻生さん、政治家のみなさん、読んでくれないかなぁ。
これ、会社の図書室にあって、ちょっとどうしようか迷った本です。
何というか、『今の政治のあり方からして、今更な感じかなぁ。』
と思ったからです。
恐らく、YO-SHIさんの最後に残った寂しさのような気持ちは、
私も残るような気が・・・。
議員秘書からジャーナリストへの転身という著者の紹介のところで、
『む?これは読んでみて、損はないかも。
というか、面白そう!』
と思いました。
早速休み明けに、図書室の棚を探します。
おみさん、コメントありがとうございました。
著者の経歴については詐称疑惑というオマケもついていて
一筋縄ではいかない方のようなのですが、本書は
「だからこそ書けた」という内容だと思います。
おみさんの予想通り読んだ後に、明るい気持ちになって、
「明日もガンバロウ!」なんて思える本ではありませんが
面白いと思いますよ。