著 者:宇江佐真理
出版社:講談社
出版日:2004年7月29日第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
るるる☆さんのブログ「rururu☆cafe」で紹介されていたので読んでみた。読んでみて最初に感じたことは、「へぇ~こんな時代小説もあるんだぁ」ということ。ちょっとホロリと来ます。
私が時代小説と聞いて思い浮かべるのは、吉川英治さんや池波正太郎さんの作品、私は読んだことはないけれど、司馬遼太郎さんも代表的な作家だろう。それらは、お奉行やお殿様、剣豪といった武士が活躍するものだ。もちろん、女性を主人公として書かれたものもあるが、そこで進行している出来事は、国盗りであったりお家騒動であったりと、やっぱり武士の出来事だ。
そんな中で、本書は奉行所の役人の家に嫁いだ主人公、のぶの揺れる心をひたすらに丁寧に描く。奉行所の役人の家なので、誘拐や殺人などの事件は起きるには起きるのだが、妻であるのぶにはそうそう直接は絡んでこない。のぶの心を占める、いや本書のテーマは、のぶと夫の正一郎との関係にあるからだ。
心に溝ができてしまった夫婦の話は、現代小説では珍しくもないが、時代が江戸時代となるとどうだろう。テレビの時代劇で、時々「人情もの」の回があって、家族や夫婦の再生を描くことはあるが、あくまで脇役であって、ここまで丁寧には描かれないだろう。
別の見方をすると、夫婦の話を描くのに、時代を江戸時代にする必要はなかろう、とも言えるのだが、そういう意見は本書を読めば出てこなくなると思う。今より格段に女性の立場が脆かったあの時代にこの物語、だから成り立つ味わいがある。のぶの舅姑が実に味わい深い人たちなのだが、そのキャラクターもあの時代だからさらに引き立っている。現代とは違う時間の流れも感じられるし、実にしっくりと物語と時代がかみ合っているのだ。
かみ合っているといえばタイトルの「卵のふわふわ」も、物語とうまくかみ合っている。本書の各章は食べ物の名前になっていて、後半になるとその食べ物が物語やのぶの心を動かすようになる。「卵のふわふわ」もある章の題で料理の名前だ。どんな料理かは読んでもらえば分かる。私はこの「卵のふわふわ」はもちろんだが、「心太(ところてん)」が食べたくなった。新しい形の時代小説に出会いたい方にはオススメだ。
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「卵のふわふわ」ですか。
白身を泡立てたものかな?それとも、ふわっとした卵焼きのようなものでしょうか?
どんな料理か気になりますね。
そうですよね~。江戸時代だからこそ、あのお舅さんのキャラが温かくて心地よく心に響くのですよね。なんてったって「家長」ですからね。いばってて当然なのに、あんなに嫁をかわいがってるんだから・・。
いや~また更に違う良さに気付かせてもらいました^^
あの時代に、女が家を飛び出したり、離縁を申し出たり・・のぶも相当に芯の強いしっかりした女性ですよね。
ラストも最高だったでしょ~!!
卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫)
書評リンク – 卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫)
風竜胆さん、コメントありごとうございます。
そして、あけましておめでとうございます。
想像する楽しみを奪わないように、ちょっとだけ
「卵のふわふわ」の正体を明かすと...
これは、汁ものです。すごくシンプルな。
でも、作り方を聞いただけで、おいしそうですよ。
—-
るるる☆さん、コメントありがとうございます。
そして、あけましておめでとうございます。
ラストは良かったですねぇ。まぁ、こうならなくても
のぶと正一郎はもう大丈夫なのでしょうが。
二人の幸せな暮らしが予見されて最高でした。
無用の用
宇江佐真理『卵のふわふわ』は、YO-SHIさんのブログ「本読みな暮らし」で紹介されていたことから、手に取りました。
のぶは、娘の頃から憧れていた北町奉行所の隠密廻り同心・椙田正一郎の元へ嫁ぐ。しかし、正一郎は妻にと望んだ娘を、目付け役の後妻に取られたばか…….
とうとう読みました!なんだか、女性に都合のよい展開で、私としては面白かったのですが、世の男性にとってはどうなのか、少し心配になりました。正一郎さん、結構かわいそうな役回りでしたよね?
茉莉さん、コメントありがとうございます。
読まれたんですね。茉莉さんのブログによると続けてもう1冊も。
のぶはつらい目に会うけれども、周りから大事にされていて、
結局は、女性にというか、のぶに都合のよい展開でした。
世の男性はどう思うか心配されていますが、私が代表することは
できませんが、えてして男は、器量のいい女性に都合が良い話は
好きというか許せるんです。カッコいい男がモテたり都合よく成功
する話よりはずっと。やっかみですかね。