著 者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2003年12月1日発行 2008年11月10日第31刷
評 価:☆☆☆(説明)
伊坂幸太郎さんのデビュー作。新潮ミステリー倶楽部賞受賞。デビュー作なので当たり前なのだが、私が読んだその後の著者の作品の特徴の原点が見られる。複数の視点で並行した物語が語られること。物語の時間が前後することがあること。伏線を潜ませる前半とそれを回収する終盤という構成。こう言ったことが、私は著者の作風だと思うのだが、デビュー作の本書ですでに特徴として現れている。ただし(まだ)デビュー作なので、これも当たり前なのだが、少ぉし切れ味が足りないというか、中途半端な感じがした。
主人公は伊藤という青年。元システムエンジニアで、会社を辞めて2か月後に、人生をリセットしようとしてコンビニを襲い失敗した。そしてパトカーで連行される途中で逃走。その後の記憶はなく、朝目覚めると見知らぬ島の見知らぬ部屋にいた。
この島は仙台の南にある島なのだが、江戸時代から外界と隔絶されていて、人々は独自のルールを持って暮らしている。不思議な人々、不思議な習慣がたくさんあるのだが、一番の不思議は、しゃべるカカシだ。しかも、このカカシは未来が分かるのだ。そして、物語はこのカカシがバラバラにされたことから展開していく。
そして、このカカシをバラバラにした犯人がだれか?ということと共に、「この島に足りないもの」が繰り返し謎として提示される。この謎と、伊藤の元彼女に迫る危険などが物語の牽引役となって終盤までひっぱる。面白い読み物にはなっている。
しかし、本書のネットでの評判は思いのほか良くない。江戸時代に外界から隔絶された島、しゃべるカカシという奇想天外さが、受け入れられないと感じた人もいるようだし、私も感じた少ぉしの中途半端さも不評の原因だろう。ただ考えて見れば、奇想天外な設定が悪いとは限らないし、その後の成熟した作品と比べてデビュー作を評価するのは間違っている。
そう、伊坂作品を何冊か読んだ後に本書を読む人は、これが始りの本なのだという思いを持って読むと良いだろう。「神様のレシピ」という、その後の作品に度々登場する言葉も、本書が初出でその意味が明らかにされていることだし。
最後に蛇足と知りつつ、一つ述べる。著者の作品が村上春樹さんの作品の影響を強く受けている、という指摘が既に多くの方からされている。本書を読む限りでは、その指摘は確かに当たっているように思う。でも、後の作品にはこういったことはあまり感じられなかった。著者は、本書の後は「伊坂幸太郎らしさ」を積み上げてきたのだと思う。
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私は、伊坂幸太郎の作品はちょっと肌に合いませんが、売れているというのは大衆の心をとらえている証拠ですね。映画化作品もあるくらいですから、ほかの作品に当たってみたいとも思います。文章がわかりにくくてすいません。
あみだすさん、コメントありがとうございます。
肌に合う合わないは、確かにありますね。ちょっとした
つまずきで、嫌いになってしまうようなこともあります。
私は、幸いなことに伊坂作品は合う方なようです。
あみだすさんのブログも拝見しました。
3月に入ってスゴイ勢いで書評等が投稿されてますね。
オーデュボンの祈り (新潮文庫)
書評リンク – オーデュボンの祈り (新潮文庫)
私は今「ラッシュライフ」読んでるけど、やっぱり最近の成熟した作品を次々読んだ後だけに・・う~んでした。
キレとかスピード感とかつい比べてしまいます(^^;
これもデビュー作だけにどうかなぁ・・と読むの躊躇してたんですが。
伊坂作品の特徴の原点が見られるというYO-SHIさんの言葉にそそられて、読んでみよっ!!って思えました(^^
るるる☆さん、コメントありがとうございます。
比べてしまうのは仕方ないですね。私のレビューにも
「比べてはいけない」という主旨の言葉が出てくるのが
比べてしまう何よりの証拠になってます。
せっかく「読んでみよっ!!」ってなっているのに
水を差すようで申し訳ないですが、本書に比べれば
「ラッシュライフ」の方が、ずっと今の伊坂作品に近いです。
あくまで「原点」ということで読んでみてください。
これはシュールですよね・・・・。
いまだにレビューが書けずにいる作品です。
伊坂作品の中でこの作品を一番最初に読んでいたら、
なかなか「他のものも読みたい」とは思わなかったかも。
ちなみに、初めて読んだのは「アヒルと鴨のコインロッカー」でした。
次が「陽気なギャングが地球を回す」。これは未読ですか?間違いなく面白いですよ!
まどかさん、コメントありがとうございます。
そうシュールです。わけわかんない!で片付けられそうです。
私はこういうのキライではないのですが、最初に読んでいたとしたら、
私の伊坂さんの評価も違ったものになっていたと思います。
「陽気なギャングが地球を回す」をお薦めいただいてありがとう
ございます。おっしゃるとおり、これは未読です。
るるる☆さんからも薦められていて、近々読みたいと思っています。
オーディボンの祈り 著:伊坂幸太郎
オーデュボンの祈り (新潮文庫)(2003/11)伊坂 幸太郎商品詳細を見る
最近ラサール石井さんの演出で、舞台になっている、と聞いて、
再読
伊坂さんのデビュー作にして、
新潮ミステリー倶楽部賞、受賞……