グローバル恐慌

著 者:浜矩子
出版社:岩波書店
出版日:2009年1月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 一昨日3月10日の日経平均株価の終値は7054.98円と、バブル崩壊後の最安値を前日に続いて更新した。この株価は、1982年10月以来じつに約26年5カ月ぶりの安値水準だという。これは、9月15日のいわゆるリーマン・ショック、米国の投資銀行のリーマン・ブラザーズの経営破たんに端を発した、世界金融危機が半年が経過しても一向に回復の兆しなく、むしろ悪化していることの現れだと言える。

 本書は、このリーマン・ショックから世界金融危機の流れを受けて、昨年の12月にエコノミストである著者が執筆し緊急出版という形で出版されたものだ。著者は現状はすでに「危機」などという生易しい状況ではなく、まさに恐慌状態だということで、タイトルを「グローバル恐慌」としたという。
 「危機」を広辞苑で引くと「大変なことになるかもしれないあやうい時や場合。危険な状態」とあるらしい。「大変なことになるかもしれない」ではなく、すでに大変なことになってしまっている、という主張だ。その通りだと思う。たかが用語ひとつの問題ではある、されど政府のどこか安穏とした対応は、「まだ大変なことにはなっていない」と思っているのかもしれないと思わせる。

 テレビニュースや新聞などを少しでも注意して見ている方は、この「恐慌」の原因の一つとして「サブプライムローン」問題があることはご存じだろう。サブプライムローンが信用力の低い個人向けの住宅ローンであり、ローン自体に問題があることも、おそらくは知っているだろう。
 しかし、この問題があるローンの焦げ付きが、なぜ世界中の経済を一気に奈落の底にたたき落としたかを説明できるだろうか?本書には、そのことが著者の明快な分析と適切な比喩によって明らかにされている。本書は「どうしてこんなことに..」という、知的な好奇心を満たしてくれる。もっともこの惨状に対して、私たちにできることはほとんどないのだけれど。

 最後に。サブプライムローンの問題の背景には、「借金で購入した不動産を担保にさらに借金」という錬金術まがいの手法がもてはやされたことがある。これは日本のバブル期と全く同じだ。つまり、日本の経験や教訓は全く生かされなかったわけだ。
 それどころか、80年前の世界恐慌で得たはずの、銀行と証券の分離という教訓も、金融万能の時代に打ち捨ててしまっている。ゴールドマン・サックスもモルガン・スタンレーも、今や商業銀行の顔をしている。「すでに大変なことになっている」というのは、「ここが終着点」という意味ではない。もう一段も二段も大変なことになる可能性は実は非常に大きい。

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