著 者:恩田陸
出版社:新潮社
出版日:2002年2月20日発行
評 価:☆☆☆(説明)
恩田陸の短編集。表題作を含む2編の書き下ろしを除いて、様々な出版社の様々な雑誌に掲載されたものを1冊にまとめたものらしい。全部で10編が収録されている。著者によるあとがきに、それぞれの短編の背景が短く書かれているので、短編を読んだ後にそれぞれの背景を読んでみることをお勧めする。
その理由は、今読んだ作品をもう一度かみしめることができるからだが、それだけではない。続けて読んでいると話にノリきれない時があるのだ。本を読むときには、無意識にでも「これはミステリー」「これはファンタジー」という心構えがあって、それで物語に入り込んでいけるのだと思う。ところが、ご存じのように著者はコメディーから感動悲話、またはホラーまで幅広いジャンルの作品を手がけている。この短編集もそれらが混在しているので、心構えができなかったり、間違えていたりするのだ。
前の作品の余韻を残して友情物語かと思っていたら、どうも怪しげな展開になって「これはホラーだったんだ」という時などは、茫然としてしまった。だから、1編終わるごとにあとがきを読んで一拍置くことで、気持ちをリセットして次に行けば良いんじゃないかと思う。
そういったことで、私は今一つ消化不良気味に読み終えてしまった。もともとホラーが好きではないこともその一因だと思う。それから、「夜のピクニック」の前日談が収められていることが、本書を手に取った理由の一つで、本編を深く読み解く何かがあるかと期待したが、そういったものはほとんどなかった。本編から想像できる前日、といったものだった。これもあとがきを読んで納得。この短編は「夜のピクニック」の予告編として書かれたものだそうだ。普通に考えて予告編に、物語の核心を書いてしまわないだろう。 少し古めではあるが、著者の変幻自在さがお好みの方は、未読なら読まれるといいだろう。そうではない方、著者の特定のジャンルや作品が好き、という方は読み方を工夫されるといいと思う。
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はじめまして。
自分もホラー、ミステリーがあまり好きでありません。
恩田陸も読んだのは『夜のピクニック』だけです。
変幻自在な書き手なんですね。
もう少し他の著書も手にとってみようと思いました。
図書室の海 (新潮文庫)
書評リンク – 図書室の海 (新潮文庫)
トキオカさん、コメントありがとうございました。
「夜のピクニック」は、私も恩田陸さんの著作で最初に読んだ作品です。
気に入ったので他の作品も読んでみたのですが、今から思えば、
さわやか系は、ちょっと珍しい作品かもしれないと思います。
この著者の私のおススメは「ドミノ」と「チョコレートコスモス」です。
どちらもホラーではありません。楽しめると思いますよ。
こんにちは。
私も恩田陸さんでは「夜のピクニック」が
ダントツに好きです。
恩田作品では「ユージ二ア」も面白かったです(^^)
自分のプログでも書いたのですが、
恩田さんの本流は夜ピクのような作品ではないような
気はしますね。
チャウ子さん、コメントありがとうございます。
夜のピクニックは、本屋大賞や映画化で話題になったので
読んだ人も多いのでしょう。私もそのひとりです。
ただ一昼夜歩くだけの物語が、あんなにも広がりと奥行き
があるのだから、著者の手腕は並大抵ではないのでしょう。
並大抵でない手腕は、他の作品にも感じられるのですが、
「夜のピクニック」みたいな作品は他にはないようです。
そこがまたすごいと言えばすごい。
図書室の海(恩田陸)
恩田陸は、不思議な作家である。作品を読んでいると、良く分からないところが結構ある。また、恩田作品は、他の作品と色々と関連を持いるため、一つの作品を読んでも、その背景などが良く分からないこともあるから、なおさらである。 「図書室の海」(恩田陸:新潮文庫……