著 者:スーザン・ケイ 訳:北條元子
出版社:扶桑社
出版日:1992年7月15日 第1刷
評 価:☆☆☆(説明)
「雑読記」のあがささんに、ご紹介いただいて読みました。感謝。
本書は、ガストン・ルルー原作の「オペラ座の怪人」の怪人(ファントム)エリックの、生い立ちからオペラ座の事件のその後までを描いた一代記。「オペラ座の怪人」は、エリックの最後の6ヶ月を描いたもので、そのストーリーには多くの謎めいた記述があり、エリックにはどんな過去があるのかと想像を逞しくしてしまう。著者はその想像を、恐らくはエリックへの愛を原動力として作品に書き上げたのだと思う。
「オペラ座の怪人」は、何度も映画化され劇画になりミュージカルとして上演されている。それを観て仮面の怪人であるエリックのファンになったと言う人がたくさんいるらしい。著者もその一人で、巻末の作者覚書によると、1967年に発表された劇画を先に読んで、ファントムについてもっと知りたいと思ってルルーの原作を読んだそうだ。
物語は、エリックの誕生の瞬間から始まり、幸せとは言えない、いやはっきり言って悲惨な少年時代、ローマでの建築の修行時代、原作でも触れられるペルシャ時代を通して、エリックその人がどのように形成されてきたかを丁寧に描く。原作でやや突拍子も無い印象を与える行動の理由が、本書には記されている。
面白い物語だった。少年エリックの境遇には心が痛くなったし、ペルシャ時代は怪人の片鱗が感じられ、原作に登場する謎の人物「ペルシャ人」の正体も明らかになった。怪人(ファントム)の一代記としてとてもよくできた作品だ。
ただ私は最後までエリックを好きにはならなかった。著者のエリックへの愛が勝ちすぎて、エリックが何をしようと許してしまうかのようなのがその理由。生来背負うことになった醜さ、それ故の悲惨な少年時代が人間形成に影響を与えていることは分かる。しかし、それは免罪符にはならない、と私は思うのだ。
本書はエリックが好きかどうかで感想が変わる。「オペラ座の怪人」を観たり読んだりして、エリックのファンだという人に強くオススメ。エリックの過去に興味があるという人には普通にオススメ。
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おはようございます。あがさです。
この物語は、私の一番の宝物なのですが、他の方のレビューをほとんど知ることなく長い時間が経ってしまっていました。
ここで、YO-SHIさんの冷静なレビューを読ませていただいて、「あぁ、私もエリックを愛しすぎているんだぁ」と気づきました。
作者と一緒で、これからもまたエリックの大ファンのままでいると思うのですが、今度は少し距離を置きながら読んでみるのも面白そうだなと思いました^^
あがささん、コメントありがとうございます。
この本を紹介いただいてありがとうございます。楽しい読書でしたよ。
あがささんが、この本を宝物だという気持ちは何となく分かりました。
恋愛をする主人公が好きになるかどうかについては、同性の方が厳しい
見方をするのだと思います。母の愛には恵まれなかったけれど、
エリックは音楽や建築、科学など多くの才能と理解者に恵まれていました。
私をはじめ、世の男にとっては妬ましいほどで、彼の苦悩を理解するには
もっと心の広さが必要なんだと思います。
副編集長賞おめでとうございます。
コメント数が多かったのでこちらの記事に書き込みました。
関係ないところにスミマセン。
前回コメントした時は名前はジョンでした。
覚えてますか?(笑)
ブログでの名前は本屋に5時間なのでこれからはこの名前でコメントします。
なんと自分のブログにもレビューの依頼が来ました。
初めて3週間もたっていないのにビックリです!!
献本とか夢のまた夢と思ってました。
何かあったら相談させてください。
追伸
前回のアドバイスで自分のペースでとありましたが、
納得し週2ペースでやってます。
大学の試験中は休みますが…
あの頃は今までためていたレビューを毎日投稿していたので、
年に365冊読まないといけませんでした。
アドバイスありがとうございました。
あとこのブログで紹介されていた「風が強く吹いている」僕も読みました。僕も大学で陸上の長距離をやってますが、良くできていました。ちなみに大学の部員が映画にエキストラに出ています。
追伸にしては長くなりましたのでこのへんで失礼します。
これからもよろしくお願いします。
本屋に5時間さん、コメントありがとうございました。
ジョンさんのお名前も覚えていますよ。
ブログが順調にスタートしたようでなによりです。
レビュープラスから登録の案内が来たようですね。
開設から3週間経っていないのに、そういった話が来るとは
運もいいけれど、レビューの内容がしっかりしているという
ことだと思います。
「本のソムリエ」右のリンクリストに登録させていただきました。