著 者:ガストン・ルルー 訳:三輪秀彦
出版社:東京創元社
出版日:1987年1月23日 初版 1988年3月25日 4版
評 価:☆☆☆(説明)
スーザン・ケイさんの「ファントム」を読んで、どこまでが原作の本書にあることで、どこからはケイさんの創作なのかが気になったことがきっかけで再読した。本書は、多くの映画化、ミュージカル化がされているが、私は20年前に劇団四季のミュージカルを観た。さすがに記憶はあいまいになっているが、いくつかのシーンは今でも思い出せる。
物語は語り手(著者)によって行われた、30年前にオペラ座で起きた一連の事件の調査結果として語られる。事件を要約すると、オペラ座で不可思議な事件が続いた後、客席のシャンデリアの落下という痛ましい事故が起き、一人の歌姫が誘拐され、伯爵が謎の死を遂げ、弟の子爵が行方不明になった、ということだ。
オペラ座での不可思議な事件を、様々な目撃証言を基に「オペラ座の幽霊」の仕業とする噂は当時からあった。調査の結果、その「オペラ座の幽霊」を知っているという「ペルシャ人」の証言と所有する証拠によって、事件の詳細な真相が幽霊の存在とともに明らかになった。
事件の詳細はここでは書かない。本は読んでいなくても映画やミュージカルを観てご存じの方もいるだろうし。ただ、少なくとも私が観たミュージカルは、エリックのクリスティーヌへの愛を中心に据えた物語となっているが(だからこそ20年の時を超えて現在まで続くロングランになっているのだと思う)、原作は怪奇小説の色合いが濃い。
だから、この原作を基に愛の物語が数多く作品化されたことに少し驚く。それにはエリックに対する共感なり理解が必要で、さらにそれにはエリックの生い立ちが重要になると思う。そしてそれは、エピローグの中にわずか2ページ、ペルシャ人の話として語られているだけなのだ。「ファントム」はここの部分をエリック一代記にまで昇華させたものと言える。
また、本書は今年が発表からちょうど100年。あの2ページによって、スーザン・ケイさんに「ファントム」を書かせ、100年後にも熱狂的なファンを得る作品として残ったわけだ。
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こんにちは。あがさです^^
私も、10年ほど前に劇団四季のミュージカルを観ました。よりファントムに魅入られたような気がしたのを覚えています。
さて、原作の方ですが、こちらは1回だけ読んだっきりです^^;
というのも、なんだか読みづらくって…。
訳が問題なのでしょうかねぇ…。
ガストン・ルルーの「黄色い部屋」は大好きなのですが。
「ファントム」も読み終わったことだし、次は「オペラ座の怪人」の再読に挑戦してみようかなと思います。
やはり、ミュージカルや映画など、いろんな形で表現されるほどに皆を魅了した作品ですものね。
あがささん、コメントありがとうございます。
「オペラ座の怪人」の日本語訳は、早川、創元、角川と3種類ある
そうですよ。私が読んだのは創元版です。こちらは、そんなに読み
づらくなかったですよ。
読み比べた他の方のブログを見ると、早川版が原作の雰囲気を一番
残しているけれど難解で、角川は分かりやすいけれどくだけすぎ、
創元はその中間、ということでした。
もし、お持ちのものが早川版なら、他のを手に取ってみてはいかが
でしょう?
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