著 者:小川洋子/文 樋上公実子/絵
出版社:ホーム社
出版日:2006年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「博士の愛した数式」でしみじみとした情感を描いた小川洋子さんの作品。世界各地の街の駅などにある「忘れ物保管室」、そこには傘や帽子などと一緒に、忘れられた「おとぎ話」も保管されていた。本書は、そんな物語を集めた「忘れ物図書室」の話。
「忘れ物図書室」は、スワンキャンディーというキャンディ屋の奥にある。キャンディーを舐めながら、世界各地から集めたおとぎ話を読む。なかなか粋な趣向で優雅な気分になれそうだ。
ところが...。全部で4話ある物語を読んでいくと、そわそわし始めてしまう。優雅にキャンディー、という気分ではなく、「私はこの話を読んでいいのだろうか?」と思ってしまう。
ここに描かれているのは、思いのほか粗い肌触りの物語だった。「赤ずきん」「アリス」「人魚姫」などをモチーフにした「こうなって欲しくない」物語。でも、心の深淵にある「こうなるんじゃないか」という暗い期待が見透かされたようで、目を離せない。何ともやっかいな本に出会ってしまった。
この本は、イラストレーターの樋上公実子さんという方が描いた絵がまずあり、それに小川洋子さんが物語を付けたもの。20点あまりある絵はどれも凛とした女性が描れている。美しくたおやかな姿ながら何者にも媚びず侵されず、真正面から見る視線にはしなやかな強さを感じる。この絵の中に小川さんはあの物語を見つけたわけだ。
実は、樋上さんの絵に文を付けた作品はこれが初めてではない「ヴァニラの記憶 」という本がそれで、こちらは松本侑子さんが詩を付けている。こちらも女性の真っ直ぐすぎるぐらいな視線と本音、そして葛藤が感じられる詩で、男の私はただドキドキしてしまってじっくり読めないぐらいだった(「おじさん」と呼ばれても抵抗がない歳なのに)。この詩も絵から生まれた詩なのだ。物語や詩を内包する。絵はそんなこともできるのだ。
Amazonには新刊の在庫がないようです。オンライン書店bk1にはありました。(2009.11.4現在)
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(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)
この本は前々から読みたかった本です。
感想ありがとうございます。
是非読んで見ようとおもいます。
小川洋子さん、こんな作品も手がけてらっしゃったんですね。
絵とのコラボ。ぜひ読んでみたいです[E:book]
小川洋子っ子さん、コメントありがとうございます。
私は、小川さんは「博士の愛した数式」しか読んだことがないので、
本来はこんなことは言えないのですが、「博士~」とはだいぶ雰囲気の
違う本で、小川さんとしても異色の部類なんじゃないかと思いました。
もし、読まれたら感想を聞かせていただけるとうれしいです。
——
chaiさん、コメントありがとうございます。
そうそう、樋上公実子さんの絵と小川洋子さんの物語とのコラボです。
「この絵だからこの物語」、って感じが分かると思います。
chaiさんも、もし読まれたら感想を教えてくださいね。
浮世離れした本を読む気になれないのはどうしてでしょうか。このような本は、手を出そうとも思いません。
「おバカ教育」のような、ぐさっと来る本が読みたいのです。
時代の変革期に、気持が平常でいられません。
暇人さん、コメントありがとうございます。
何のために本を読むのかは、それぞれに色々な理由がありますね。
この本は「役に立つ」のか、と聞かれれば、うまく説明できない。
手を出そうとも思わない、という暇人さんの考えも私なりに分かります。
教えていただいた「おバカ教育の構造」って本、面白そうなので
いつか読みたいと思います。私、小中学校にも少し関わっているので
色々と思うところもあるので。